研究課題/領域番号 |
18K00516
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安保 寛尚 立命館大学, 法学部, 准教授 (50733987)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フェルナンド・オルティス / ラモン・ギラオ / エミリオ・バジャガス / 混血のレトリック / 黒人詩 / キューバ性 / 黒人詩アンソロジー / トランスカルチュレイション |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果は主に二つある。第一に、「砂糖の秩序、タバコのカオスーフェルナンド・オルティスの『タバコと砂糖のキューバ的対位法』におけるキューバ性とカリブ性をめぐってー」(2020年7月、『立命館言語文化研究』32巻1号、pp.75-89)を発表したこと、第二に、日本イスパニヤ学会において、「ラモン・ギラオとエミリオ・バジャガスの黒人詩とアンソロジーについて」(2020年10月、関西外国語大学)の口頭発表を行ったことである。 本研究の目的は、アフロキューバ主義と呼ばれる20世紀前半のキューバの黒人芸術運動において、黒人文化の受容と混血アイデンティティの言説がどのように形成されたのかを明らかにすることである。一つ目の成果では、砂糖生産と奴隷貿易の歴史とキューバにおけるその変遷を踏まえた上で、植民地主義的な砂糖とキューバ独自の産物としてのタバコとの対比において、フェルナンド・オルティスが生み出した「トランスカルチュレイション」というキューバの混血レトリックについて論じた。そしてそのレトリックから、黒人文化が白人文化と接触し変容することによって「キューバ性」が獲得されるというオルティスの思想の解明に向けて前進した。 黒人詩の流行は、アフロキューバ主義の展開において中心的役割を果たした。ラモン・ギラオとエミリオ・バジャガスは、その先駆者であり、それぞれアンソロジーを編纂した。二つ目の成果は主にその二冊の比較分析を通して、二人の思想と黒人詩の展開を明らかにする研究報告であり、次年度に向けてその内容を論文にまとめる準備を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において、これまでおよそ順調に研究成果を挙げてきたが、今年度は新型コロナウィルスの感染拡大によって、予定していたキューバでの調査を行うことができなかった。このため、必要な資料を揃えることができず、また現地の研究協力者からの助けを得ることもできなかった。その結果、計画に遅れが生じたため、研究期間の一年延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、新型コロナウィルスの感染拡大によって研究を予定通り遂行することができなかったため、研究期間の1年延長を申請した。本研究の目的を完全に達成するためには、キューバへの渡航が必要だが、現状ではいつそれが可能になるか分からない状態である。渡航の可能性を追求したいが、それができない場合には、国内において可能な資料収集を行い、最終的な成果へつなげるための最善の準備を整えることを今後の方策とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、キューバへの渡航と研究調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で実施することができなかったため。次年度使用額は、渡航が可能になればその出張費用にあてる予定だが、それが難しい場合は、国内で入手可能な資料収集に使用し、本研究の目的達成に向けての最大限の準備を行う。
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