研究課題/領域番号 |
18K00516
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安保 寛尚 立命館大学, 法学部, 准教授 (50733987)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ブッフォ劇 / ヴァナキュラー文化 / キューバのロマンせ / シボネイ主義 |
研究実績の概要 |
本年度は①「キューバのブッフォ劇におけるヴァナキュラー言語、およびナショナリズムの発現」(『立命館大学言語文化研究』第33巻3号、pp.103-115)、②「植民地時代キューバの物語詩ーキューバ人の人種的・文化的主体の表象の変遷についてー」(『立命館大学言語文化研究』第33巻3号、pp.103-115)の2本の論文を執筆した。また後者については、日本バラッド協会第13回会合において同題目で研究報告も行った。 ①の論文は、19世紀後半のキューバにおいて、ナショナリズムの高揚と共に人気を得たブッフォ劇の展開を分析した。そしてこの劇では、スペインとは異なるキューバ的なものを表現するために、黒人登場人物と黒人文化が白人クリオーリョの作家によって都合よく利用されたことを論じた。 ②の論文は、19世紀に展開した「キューバのロマンセ」とシボネイ主義の物語詩の運動に特に注目した。そしてそれらの詩作品の舞台や登場人物の分析を通して、キューバの人種的・文化的主体が白人農民からインディオへと変化したことを論じた。 本研究は、1920年台からのアフロキューバ主義において、黒人文化の受容と混血アイデンティティがどのように形成されたかを解明することが目的である。したがって本年度の実績は、その目的に直接関わるものではないが、アフロキューバ主義以前のキューバの文化・芸術活動において、黒人文化がどのように受容・操作されていたのかを明らかにする意義を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画に照らすと、3つある主要な目的のうち、最後の目的、すなわち、フェルナンド・オルティスのレトリック形成のプロセスの解明について研究が順調に進んでいない。その主な原因は、コロナ禍によってキューバへの渡航が困難となり、必要な資料の入手ができていないからである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の完遂には、キューバへ渡航して前述した未入手の資料を収集し、その整理と分析を踏まえた研究発表が必要であり、期間内には難しいと考えている。対応策として、本研究計画には含まれていなかったが、フェルナンド・オルティスとは異なるアプローチでキューバ黒人の民俗学研究に取り組み、黒人物語集などを執筆したリディア・カブレラの作品研究に取り組む予定である。その成果によって、アフロキューバ主義における黒人文化の受容について、別の視点から明らかにすることができると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き、コロナ禍の影響で、予定していたキューバへの出張と資料収集ができなかったために次年度使用額が生じた。使用計画としては、状況が許せばその出張で使用するが、それが難しい場合は研究計画を部分的に変更して、期間内に成果を挙げることが可能な研究のための資料収集に使用する予定である。
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