研究課題/領域番号 |
18K00524
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 正人 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90337410)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Dravidian languages / Kurux / Malto / historical linguistics / comparative method / Proto-Dravidian |
研究実績の概要 |
本年度は、新型コロナウィルス感染症の流行にともなう海外渡航の制限のため、インドでの調査ができなかった。それに代わるものとして、以前行った調査の資料をもとに、クルフ語・マルト語の語源研究と、語源研究に必要となる音変化および形態変化の検討を行った。 クルフ語の音変化については、Pfeiffer 2018という先行研究があるが、検討の結果、音変化を規則的なものと考えておらず、同じ音に何通りもの音変化を想定しているといった、多くの問題点があることが明らかになった。そこでクルフ語辞書の語形を見直して自分で再構成した音変化をもとにクルフ語・マルト語の動詞活用を精査した。そのような検討の成果として、過去形定動詞の活用が実は定動詞ではなく、元々は分詞を述語的に使ったものが定動詞に変化したという仮説を立てた。それによると、クルフ語・マルト語の本来の過去形定動詞は、マルト語中央方言と南方言に残る短形副動詞に保存されており、述語的分詞に由来する新しい定動詞によって周辺的用法に限定されたものとなる。この仮説を支持する事実として、中南ドラヴィダ語派のペンゴ語とコンダ語に、形容詞を述語として使うときに現れる -aka という接辞があり、クルフ語・マルト語で想定しているのと同様、分詞について述語化する働きをもつ。この発見は2011年12月に行われたインド言語学会の国際会議 43th International Conference of Linguistic Society of India における招待講演で公表し、2022年1月刊行の International Journal of Dravidian Linguistics 誌および Indian Linguistics 誌で論文として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は新型コロナウィルス感染症の拡大によって、インドに渡航できず、インドから話者を招へいして調査することもできなかった。正確には渡航は可能であったが、前後の隔離期間や現地での移動の制限を考えると、調査を断念せざるを得なかった。1,2語であればメールやSNSを利用して聞くことも可能だが、まとまった語彙の調査には現地訪問が必要である。そのため、予定していた語彙調査が実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査には引き続き制約があり、今年度渡航できるかどうかは現時点では分からない。そのため、これまで後回しにしてきた語源の分析を先に進め、小規模であってもまとまった語源の分析を提示できるよう研究方法を変更することで、課題の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行により、予定していたインドでの現地調査が実行できなかったため。
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