研究課題/領域番号 |
18K00525
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永井 正勝 東京大学, 附属図書館, 特任准教授 (70578369)
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研究分担者 |
和氣 愛仁 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70361293)
中村 覚 東京大学, 情報基盤センター, 助教 (80802743)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | IIIF / 画像データベース / 碑文 / 地名 / 都市リスト / ヒエログリフ / エジプト / シリア・パレスチナ |
研究実績の概要 |
本研究は、古代エジプト聖刻文字碑文資料を対象として、「碑文資料のIIIF画像」、「言語情報(文字、形態素・語、構文などの記述)」、「言語情報の根拠となるエビデンス(辞書や文法書の解説など)」を統合した「WEB公開型の検索プラットフォーム」を開発し、コンテンツを英文で公開する試みである。本研究の特色は、近年急速に利用が高まっている画像共有の国際規格であるIIIFを使用することにより、「碑文画像」、「言語情報」、「根拠」の3点を切り離すことなく、統合させたまま公開・共有することを目指す点にある。2019年度、言語研究班としては、前年度から引き続き、古代エジプト語の聖刻文字碑文ならびに神官文字写本について、言語情報の作成とエビデンスの整理を机上で行なった。その結果、神官文字写本については、IIIFを使用し、Moeller (1909-36) Hieratische Palaeographieの字形データベースを作成することができた。また、聖刻文字碑文については、エジプトの遺跡で実際に碑文の残存状況を調べながら、公開対象とすべき碑文を吟味した結果、古代エジプトの遺跡に残されている地名リストを扱うのがよいと判断された。地名リスト碑文をIIIF形式の画像で公開することの最大のメリットは、碑文に記されている地名を地図上の地点や遺跡に関する考古学情報とリンクさせることが可能となる点にある。本研究の出発点は言語記述にあるが、IIIF画像を使用することにより、その画像内で碑文のテキスト情報、地理情報、考古学情報など複数の異種情報をハイパーリンクさせることができる。この試みはIIIF画像の利活用の幅を広げることにも貢献するとともに、碑文の内容を総合的に理解することにも寄与する。システム研究班は、IIIF画像と地理情報とをリンクさせる技法について調査を行い、実装の準備を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「言語情報(文字、形態素・語、構文などの記述)」の作成のうち、神官文字については、字典となる画像データベースを作成することができた。また、公開すべきIIIF画像については、エジプトで地名リスト碑文の実験調査ならびに写真撮影を行なった。写真撮影は1億万画素を誇る中判デジタルカメラを用いて行なったため、高精細画像を得ることができた。撮影した地名リスト碑文に対して「言語情報(文字、形態素・語、構文などの記述)」の作成を開始したものの、年度内に終えることはできなかった。しかしながら、IIIF形式の画像、言語情報の下準備、IIIF画像と種々の情報のリンクの実装準備が整ったため、次年度の中頃にはデータの公開を行うことができるものと考えている。作業全体を考えると、おおむね順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はまず地名リスト碑文の言語情報を完成させるとともに、地名に関する考古学情報を新規に作成する。秋以降にIIIF画像に言語情報、地理情報、考古学情報をハイパーリンクさせ、IIIF画像公開の試運転を行う。その後はIIIF画像公開の試運転をしながら、データ構造の見直しを行いつつ、公開システムを完成させる。また、可能であればエジプトに赴き、碑文の写真撮影を行い、対象資料を追加する予定である。
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