研究課題/領域番号 |
18K00526
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
匹田 剛 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (80241420)
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研究分担者 |
宮内 拓也 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (50781217)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ロシア語 / 統語論 / 形態論 / 格 / 一致 / 名詞句 / 数量詞 / 連続体 |
研究実績の概要 |
ロシア語における広義の名詞句には様々なタイプがあり,中でも「数量詞+名詞」からなるいわゆる数量詞句は,「一致定語+名詞+不一致定語」からなる典型的名詞句とは異なる多くの非典型的な振る舞いを見せる.本研究は非典型的名詞句の見せるそれらの非典型的振る舞いを包括的に記述し,かつ数量詞の中でも個数詞を中心に成立する数量詞句の連続体的性質を考慮に入れた上でより広範囲に言語事実を説明可能とする理論の構築を目指すものである.昨年度研究分担者として加わった宮内拓也を始めとした若手研究者とともに研究を展開している. 説明理論の構築に関してはメンバーそれぞれがそれぞれの立場において成果を上げた.その中でも匹田剛(研究代表者)の"The Preassigned Case of Russian Quantifiers"と後藤雄介(研究協力者)による"Some Remarks on Agreement in Animacy in Russian"は,それぞれ名詞句内の異なる現象を異なるアプローチで説明しようと試みたものであるにも関わらず,いずれもある種の数量詞が,従来主格(あるいは対格)を付与されていると考えられていた環境において実は数量生格を持っていると結論づけたことは非常に興味深い.何故両者の分析が数量生格に収斂したのかは今後検討する価値があると思われる. 上述の匹田と後藤の研究は両者の博士論文完成に向けて間違いなく大きな意味を持っていることは間違いないものの,全体として,本年度の研究活動はコロナ渦により全メンバーにとって減速を強いられてしまったことは否定できない.とくに全メンバーの博士論文執筆と非典型的名詞句に関する包括的データベース作成の作業は,少なくとも直接的な作業に関しては,作業速度が遅くなったことは否めない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は大きく分けると:(1)非典型的名詞句における典型的名詞句とは異なる振る舞いに関する記述的データの蓄積,(2)それらの非典型的振る舞いに関する連続体性を考慮に入れた説明理論の構築,の2点である.(2)の理論構築に関しては一部は概ね順調に進んだと言えるし,また成果の公表も行えたものの,今年度は昨年度に始まる新型コロナウイルスをめぐる社会状況の影響で,それぞれの教育業務・事務業務における負担が激増し,日々コロナ渦での教育への対応に追われる毎日であった.そのため,具体的な共同作業を含む(1)だけでなく(2)についても予定通り計画が進められなかった.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度コロナ渦により停滞を余儀なくされたため,計画の進行を遅らせざるを得なかったが,今年度は徐々に社会状況が改善されることが期待される.今年度は遅れを取り戻すためにも,メンバー間の情報交換を密にするため昨年度ほとんど開催できなかった研究会を行い,説明理論の構築,データベース作成の両面において研究の推進をはかる.そのためにはオンラインによる開催が有効な手段であると考える. また,当初の予定では2021年度が最終年度であるが,より確実に研究を完遂するために,更に1年間の計画の延長を申請することを検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦により研究計画に遅れが生じたため,支出額が当初の予定より少なくなってしまった.次年度以降は,今年度見送らざるを得なかった外国語による業績の発表が更に多くなり,そのための外国語校閲などの費用が大幅に必要になる見込みである.また,データベース構築のために機材なども必要に応じて購入が見込まれる. なお,当初の予定では2021年度が研究の最終年度であるが,2020年度(及び2019年度)に生じた研究の遅れのため,更に1年間の計画の延長を申請する予定である.
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