研究課題/領域番号 |
18K00529
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
入江 浩司 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (40313621)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アイスランド語 / 非人称構文 / 非人称受動構文 |
研究実績の概要 |
本年度は現代アイスランド語の非人称構文のうち、いわゆる受動進行形〈vera verid ad 不定法〉の研究を中心に行なった。主として参照した先行研究 Barddal & Molnar (2003) では、アイスランド語の受動構文が、文頭位置への項の昇格の有無と動作性アスペクトの違いにより6種類に分類されているが、受動進行形については現在時制で受動構文が進行的意味で解釈されるには進行形の構文を取らなければならないと注記されているのみで、受動構文全体の中での位置づけが十分検討されていない。英語と同様の〈be動詞+過去分詞〉による受動構文は主格主語が現れるのに対し、受動進行形では主格成分が現れず、そもそも構造の大きく異なる構文である。受動進行形の性質を明らかにするために用法の実態を調査した。研究代表者が集めた新聞記事のコーパスの分析では、時制に関して、能動の進行形では現在時制と過去時制の出現頻度がおよそ3:1の比率であるのに対し、受動進行形では現在時制と過去時制の比率は9:1となり、過去時制で受動進行形の割合が大きく下がることが判明した。受動進行形に現れる動詞は対格ないし与格目的語をとる動詞と、前置詞つき目的語を取る動詞が多く、若干の自動詞も現れていた。時制によって動詞の種類が特に異なるということはなかった。非人称受動文では〈vera+過去分詞〉という構造で、前置詞つき目的語をとる動詞と、いわゆる非能格自動詞が現れる構文の二つが代表的であり、いずれも動作主が抑制され、この点は受動進行形と共通しているが、完結相的か非完結相的かという点で異なっている。アイスランド語には過去時制で完結相的な捉え方をし、動作主を抑制する受動構文が欠けていたが、若い世代の話者が使ういわゆる新受動構文〈vera+過去分詞+定の目的語〉はこの穴を埋めるように生じた可能性があり、これは本研究の新しい解釈である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた現地調査ができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在の世界の情勢では現地調査を行うことが困難であるため、母語話者に対する調査はウェブを介したオンライン調査で代替し、文献やコーパスを利用した調査の比重を高める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での現地調査が実施できなかったため。コロナウイルス関係の状況が好転した場合には、次年度に現地調査の予定を拡大して実施する計画である。
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