近年利用可能になった各種の歴史的資料の電子アーカイブおよび最近影印出版されて利用可能になった歴史的資料を用いていくつかの研究に取り組んだ。 初期英語学習史の領域では、幕末に出版された最初期の英語学習書のうち、中浜万次郎訳『英米対話捷径』、著者不明『和英商賈対話集』、小島雄斎輯『商用通語』、清水卯三郎『ゑんぎりしことば』の4点について、それぞれの依拠資料の有無と如何の問題を考察した。中国の歴史的世界地理書の書誌的研究としては、魏源『海国図志』60巻本の従来未知の版区別の存在を明らかにし、同書の50巻本から100巻本に至る多数の版の系譜関係を考察した。いずれも従来の通説を抜本的に書き換えるもので、それぞれ『或問』第44号、『大阪大学大学院人文学研究科紀要』第1巻に論文の形で発表した。ほかに中国語で貨物自動車の類を表す「ka車」という語の歴史に関する考察も行った。これは次年度に論文として発表する。 また、本研究課題およびそれに先行する研究課題の期間における主要な研究成果を見直してまとめた著書『英語東漸とその周辺』『近代日中新語の諸相』の2冊を刊行した。 ほかに、近代日中語彙交流、中国の地理書の書誌的研究、初期英語学習史などに関するテーマで多数の講演、研究発表を行った(日本1回、中国5回、台湾1回、シンガポール1回)。
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