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2018 年度 実施状況報告書

特殊拍の獲得における脳機能発達と幼児語・育児語の役割

研究課題

研究課題/領域番号 18K00537
研究機関徳島大学

研究代表者

佐藤 裕  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (80415174)

研究分担者 山根 直人  国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 専門職研究員 (60550192)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード特殊拍 / 言語発達 / 近赤外分光法(NIRS)
研究実績の概要

本年度では,特殊拍を含む語の対立に対する乳幼児の脳機能測定を実施し,脳反応の発達的変化を基に,特殊拍に対する言語的な処理がいつ開始されるかを明らかにすることを目的とした。この目的のため,日本語を母語として学習している乳幼児を対象に,近赤外分光法脳機能測定装置にて特殊拍刺激に対する左右側頭部付近の反応を計測した。音声刺激は,長短母音対立(「まな」対「まーな」),促音/非促音対立(「ぱた」対「ぱった」),撥音を含む対立(「まな」対「まんな」),二重母音を含む対立(「まな」対「まいな」)であった。
本年度においては,特殊拍の中でもっとも獲得や習得が難しいとされる,促音/非促音対立に対する脳機能測定結果を,後の実験における対象月齢の上限の目安とするため特に詳細に分析した。その結果,10ヶ月齢以前では,促音/非促音対立に対する明らかな左優位性が確認されなかったが,13ヶ月齢では,左側頭部の反応が促音/非促音対立の刺激提示区間において,統制区間よりも有意に増大する結果が得られた。なお,二重母音を含む対立に対しても同様の結果が得られた。ただし,二重母音対立への左右反応を比較すると左右差が観察されたが,促音/非促音対立では左右差が生じなかった。
これらの結果は,13ヶ月齢児が言語機能を反映した知覚機構により促音/非促音対立を処理しこの対立が語彙識別に寄与することを学習し始めていることを示す可能性がある。ただし,二重母音を含む対立に対して示された明確な左右差は促音/非促音対立に対して生じなかったため,13ヶ月齢以降もその発達が続くと考えられる。また,本年度の結果は,特殊モーラが一律に獲得されるのではなく,その種類により発達軌跡が異なることを示唆した点で,従来より精緻な言語発達軌跡を示した点で意義がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究分担者の協力もあり,実験による測定は順調に進んでいる。
具体的には,4種の特殊拍を含む刺激対立(長短母音対立:「まな」対「まーな」,促音/非促音対立:「ぱた」対「ぱった」,撥音を含む対立:「まな」対「まんな」,二重母音を含む対立:「まな」対「まいな」)を聴取した際の脳機能測定実験である。それぞれの刺激に対して7ヶ月より低月齢児,また10,13ヶ月児のデータが各月齢で10-20名分揃いつつある。
今後は解析を迅速に進め,4種の特殊拍の発達の解明を進める。

今後の研究の推進方策

特殊拍を含む単語刺激対に対する脳活動の発達的変化を明らかにするための実験1における解析を進めつつ,足りないデータを明らかにし,そのデータを採取する実験を実施する。また,特殊拍への選好と脳機能との関連性を明らかにする実験2に関して,実験1の結果を基に実験計画の方針を確固たるものとし,実行のための準備・予備実験を経て,本実験を開始する。

次年度使用額が生じた理由

当該年度において,特殊拍を含む単語刺激対に対する脳活動の発達的変化を明らかにする実験1に必要な脳機能測定装置をレンタルする予定であったが,研究分担者施設での実験を予定より多く実行することが可能となったためである。翌年度分と合わせて,特殊拍を含む単語刺激対に対する脳活動の発達的変化に関する実験1と特殊拍への選好と脳機能との関連性を明らかにするために実施する選好振り向き法による行動測定と脳機能測定のための実験2の被験者謝金と実験設備レンタルに使用する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 小学生における漢字の形態・音韻・意味処理に対する脳活動の発達的変化,2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤裕,山根直人
    • 雑誌名

      漢字・日本語教育研究

      巻: 6 ページ: 52-75

  • [雑誌論文] The Effects of Lexical Pitch Accent on Infant Word Recognition in Japanese2018

    • 著者名/発表者名
      Ota Mitsuhiko、Yamane Naoto、Mazuka Reiko
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychology

      巻: 8 ページ: 1-10

    • DOI

      doi.org/10.3389/fpsyg.2017.02354

  • [学会発表] Infants’ sensitivity to emotional animal vocalization and the evolution of vocal communication.2018

    • 著者名/発表者名
      Yamane, N., Mihoko, H., Kanato, A., Kijima, N., Okanoya, K., & Mazuka, R.
    • 学会等名
      International Conference on Language Evolution (Evolang XII). Torun. Poland.
    • 国際学会
  • [学会発表] Communicative function of singing to infant.The effect of singing behavior and singing style toward the infants’ social preference and its development.2018

    • 著者名/発表者名
      Yamane, N., Ohori, A., and Mazuka, R.
    • 学会等名
      XXI ICIS. Philadelphia. USA.
    • 国際学会
  • [学会発表] 乳幼児の分離ストレスに対するコルチゾールの反応性と社会性について.2018

    • 著者名/発表者名
      福田早苗,高橋美紀,山根直人,馬塚れい子
    • 学会等名
      第25回精神神経内分泌免疫学研究集会. (横浜, 神奈川)
  • [学会発表] Acoustic analysis of lexical tones in Thai infant-directed speech.2018

    • 著者名/発表者名
      Chutamanee Onsuwan, Juthatip Duangmal, Nawasri Chonmahatrakul, Reiko Mazuka, Naoto Yamane, Hyun Kyung Hwang.
    • 学会等名
      Asia-Pacific Babylab Constellation. Singapore
    • 国際学会
  • [学会発表] 画像刺激による虚再認の生起 --DRMパラダイムによる検討--,2018

    • 著者名/発表者名
      神浦 駿吾, 佐藤 裕
    • 学会等名
      日本認知科学会第35回大会
  • [図書] 特別支援教育(第4章障害種別による発達特性と関わりについて)2019

    • 著者名/発表者名
      青柳まゆみ,佐藤裕
    • 総ページ数
      248
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623081882
  • [図書] 子どもの音声(第2章1節乳幼児の音声知覚の発達)2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤裕
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      コロナ社

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公開日: 2019-12-27  

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