研究課題/領域番号 |
18K00539
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
吉本 靖 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (70284940)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 沖縄語 / 時制辞 / 分散形態論 / 日本語 / ラベリング / 丁寧辞 |
研究実績の概要 |
令和3年度の目的である「沖縄語の述語の活用に関する分散形態論的研究」に沿って研究を行い、Tense Inflection, C-selection, and Labeling in Japanese and Okinawanという論文を執筆し、公刊した。同論文では沖縄語の時制辞は形容詞述語と否定動詞述語が同じパターンを示し、肯定動詞述語の示すパターンと異なるという事実を指摘し、このパターンは日本語のパターンと同じであることを指摘した。その上でこの共通性は日本語では否定辞が範疇的には形容詞であることから導かれるが、沖縄語ではそうではなく、形容詞に付随する存在動詞 -an と共起する現在形時制辞がゼロ形態であることから導かれることを示した。同論文ではまた、日本語の丁寧辞「です」が肯定動詞の後にはこれないが、否定動詞や形容詞述語の後にはこれるという事実に対して、ラベリングのメカニズムによる説明を提案した。より具体的には、日本語の時制辞(T)が弱主要部であると仮定すれば、Saito (2018)の提唱するラベリングメカニズムにより上記の事実が説明できることを詳述した。 上記論文をもとに国際学会であるTexas Linguistics Societyの第21回年次大会(2022年2月12日)でオンラインのポスター発表を行った。また、札幌を拠点とする国際学会のThe 12th Workshop on Phonological Externalization of Morphosyntactic Structure: Theory, Typology and History(2022年2月13日)においても、同論文の口頭発表をオンラインで行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画中の目的3「沖縄語の述語の活用に関する分散形態論的研究」については一定の成果をあげたが、目的2「日本語と沖縄語の格比較」の研究がやや遅れをとっている。その理由としては、前者の方が関連するデータの取得が比較的容易で研究を進めやすいことがあげられる。後者は信頼性のあるデータの取得が想定していたよりも難しいことが判明したため、前者の方を令和3年度は優先して研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べたように目的2の研究はやや難航している。しかしながら調査方法を更に工夫することによって、目的2についても何らかの成果を上げることを令和4年度は目指していく。一方で、目的3の「沖縄語の述語の活用に関する分散形態論的研究」は更なる研究成果が期待できるトピックであるため、この方面の研究も継続して実施していきたい。令和4年度は最終年度となるため、これまでの研究結果をより多くの研究者と共有できるような公表の仕方を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症が収束を見ない中、研究発表をした2つの学会(1つは米国テキサス大学主催、もう1つは札幌大学主催)がともにオンラインでの開催となったため、計上していた旅費の支出がなくなった。令和4年度4月現在コロナ禍はまだ続いており、学会の開催方法も見通せない状況であるが、通常の現地開催となった場合は残額の多くを出張旅費として使用することを計画している。令和4年度も学会がオンラインになった場合には沖縄語のコンサルタントとの調査回数を増やしてデータをなるべく多く取得することや、関連研究図書の購入、研究アシスタントへの謝金などに助成金を使用していきたい。
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