| 研究実績の概要 |
本研究課題では、構造構築におけるラベル（標示）が、(i)どの程度、併合操作の対象の持つ特徴（素性）から予測され、(ii)どの程度、併合結果としての統語的構成物（Syntactic Object, SO）がその後のMerge対象として機能し意味機能解釈を受ける上位構造に依存するかを、構造的二重性を示す構文の考察から探ることにある。統語理論上は、構造構築（Merge）がSOの構築を保証することから、ミニマルな観点では(i)だけで充分となり(ii)の視点は深くは追求されていない。しかし、SOが言語表現の一部として機能しなければ、構造構築自体が無意味であることから、本研究では、むしろ、(ii)の視点からラベル操作を考察してきた。
2020年度は本研究課題の最終年度で、以下の「進捗状況」でも述べたが、コロナ禍で研究活動が大幅に限られ、計画内容も変更せざるを得なかったが、SOとラベルの関係性について、CP領域のラベルとCPの機能、VP領域の意味役割素性とラベルの関係について考察を深めることができ、それぞれを論文化し、後者については、Zoomでの国際ワークショップで発表した。
上記の考察ポイントについては、言語表現の最大範疇であるCPは、主文の場合は、情報構造との関わりで、CPの下位範疇であるForceP素性が上位構造（情報構造）に読み取れるような形でラベル標示される必要があること、従属節の場合（特に、裸ト節）は、上位構造における機能に関わらず、CPラベルと内部構造は画一であること、が明らかになった。また、VP範疇内のSOは、ReinhartのTheta Theoryの素性（［±cause］［±mental state］）の構造化により解釈可能となるとの分析を結果構文の分析を通して論じた。
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