研究課題/領域番号 |
18K00547
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
勅使河原 三保子 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (40402466)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | vocal stereotyping / phonetics / social psychology / impression formation / universality |
研究実績の概要 |
本研究では我々が音声を聞いて話し手の印象を形成する仕組みを体系的に解明することを目的としている。具体的には、我々が音声を聞いて話し手の印象を形成する仕組みには、言語文化の違いを超えた普遍性と個別言語文化による特殊性があると仮定し、社会認知や動物の発声における知見を基に、音声に基づく印象形成の3次元モデル(warmth, competence, activity)を提唱する。そのモデルを研究期間を通して合計8つの言語における聴取実験を行うことによって検証し、モデルの普遍性と個別言語文化の特殊性をあぶりだす。 研究の5年目であった2022年度は2019年度に準備した音声資料から選択した音声を刺激音として用い、被験者に想起する人物像の印象を自由に記述させる実験を遂行する予定であったが、コロナ禍での実験実施に対応できず、実施できずに終了した。 しかしながら、2021年度に研究発表を行った、日常発話音声ではほとんど出てこないが演劇や吹替でやくざやチンピラなどの悪役の登場人物の役割語として用いられる顫動音(いわゆる巻舌)について、1930年代以降の映画やテレビドラマの音声を対象として行った調査に基づき、このような創作の世界では顫動音が元は江戸・東京の人物を描くために用いられていたのが、後になって地域性を無視して悪役と結びつくようになったことを観察したプロジェクトを論文の形でまとめることができた。このような単音レベルのバリエーションが聞き手に与える印象は、当初本研究が体系的に調査しようとしていたモデルと比較すると、周辺的かつ局所的にしか全体的な印象に寄与しない可能性も考えられるものの、歴史的な発展をたどることができる可能性など学術的に興味深い発展の可能性が見いだせるため、文献的調査を行いながら、顫動音が聴覚印象や人物の印象形成に与える影響の言語を超えた普遍性についても検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では実験として音声資料を刺激音として用いた予備実験、本実験を行う予定であったが、コロナ禍での実験実施に対応できず、まだ実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初2019年度に実施予定であった予備実験およびカナダ、ナイジェリアで行う予定であった実験は、実施可能な場合は日本で行う予備実験と同じものを同程度以下の規模で行う。今年度も4年前から聴覚・音響分析を進めている日本語母語話者による日本語の流音生成に関する研究および昨年度着手した映画、ドラマ等の収録音声に基づいて行った流音分析を進めることにより、日本語で聞き手に一貫した聴覚印象を与える特徴の一つとして考えられるラ行子音に対する理解をさらに深めることを目指す。また、これらの調査から得られる知見に基づき、このような一見すると周辺的かつ局所的にしか全体的な印象に寄与しないと考えられる要素が全体的な印象に寄与する現象を説明するモデル、あるいは歴史的発展の可能性を探る等のより抽象度を高めた議論にも取り組む。さらに、日本語と同じように流音が1種類しかない他の言語の既存の音声資料も入手、利用し、複数言語にわたる特徴の抽出を目指す他、流音に関する言語の違いを越えた普遍性に言及する文献を整理し、流音の体系的な理解をさらに深めることに努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度以前に研究費の多くを予備実験および本実験における研究補助者、被験者への謝金として使用する予定であったが、実験未実施であるため、その分は依然として未使用である。今年度は実験実施により被験者、研究補助者への謝金として利用するほか、昨年度と同様に新たに分析対象として利用する日本語や他言語の音声資料、書籍の購入にも利用する。
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