研究課題/領域番号 |
18K00549
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
田嶋 圭一 法政大学, 文学部, 教授 (70366821)
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研究分担者 |
北原 真冬 上智大学, 外国語学部, 教授 (00343301)
米山 聖子 大東文化大学, 外国語学部, 教授 (60365856)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 音声産出 / 音声知覚 / 第二言語学習 / 韻律的特徴 / 促音 / 分節音的特徴 / 有声・無声 |
研究実績の概要 |
本研究では,外国語の学習において多くの困難を伴う韻律的な自然性の解明のため,ストレス(強勢)を持つ言語に見られる音声の弱化を,ストレスを持たない言語の音声と比較対照しながら扱う。音声の弱化の産出・知覚・学習のメカニズムの一端を明らかにするために,音声コーパスの分析や,一連の音声産出・知覚実験を行うことを目的として実証的研究を行う。計画初年度は,申請時に計画していた研究から多少逸脱するものの,以下の2つの課題に取り組んだ。 (1) 日本語の促音・非促音といった韻律的特徴や,有声・無声の対立といった分節音的特徴が,単語そのものの親密度や単語とのミニマルペアの有無といった語彙的要因によってどの程度の影響を受けるかを,統制された刺激単語を材料とした音声発話実験および日本語話し言葉コーパス(CSJ)の分析を通じて検証した。その結果,語頭破裂音の有声・無声の対立はミニマルペアの有無に影響を受けること,具体的には破裂音に後続する母音の長さがミニマルペアがある場合の方がない場合より有意に長くなることが明らかとなった。さらに,促音・非促音の対立はミニマルペアの有無および単語親密度の影響を受けること,具体的にはミニマルペアがある場合の方がない場合より対立が強調され,高親密度語の方が低親密度語より対立が弱化されることが明らかとなった。 (2) 韓国語を母語とする日本語学習者による促音・非促音で対立する単語の発話に対して音響分析を行い,さらにこれらの発話を用いた知覚実験を行い,促音の有無の判断および発話のリズムの自然性の評定を,日本語教師に行ってもらった。その結果,学習者の促音・非促音の発話において当該音の長さに明確な境界がないこと,促音の挿入(非促音を促音と誤認識すること)および脱落(促音を非促音と誤認識すること)が頻繁に観察されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題申請時に計画していた英語音声における強勢および弱化の過程を直接検証する実験は,刺激材料の作成や参加者募集が予想以上に困難であると考えられたため,実施に至らなかった。しかしその代わりに,音声の韻律的特徴および分節音的特徴の強化や弱化がどのような要因によって引き起こされるかを,特に語彙的要因(単語の主観的親密度およびミニマルペアの有無)に着目して実験を計画し実施した。その結果,一定の研究成果を得ることが出来たので,本課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在実施している実験の結果を基にして,第二言語学習者による音声産出において韻律的・分節音的特徴の強化・弱化がどのような要因の影響を受けるか,それが母語話者の特徴とどのような点において類似または相違しているか,検証するための実験を計画し,実施する予定である。また,新たな取り組みとして,日本語話者による英語発話において,"hit"-"hid","heat"-"heed"のような単語において,母音や後続破裂音の閉鎖区間の長さが,後続子音の有声・無声や,対応する日本語での外来語における促音の有無といった要因の影響をどの程度受けるのかを,発話実験および音響分析を通して検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題申請時は,計画初年度に研究代表者および分担者のPC環境等を一斉に更新する目的で,ノートPCや統計ソフトなどの購入を予定していたが,現存の機器をしばらく引き続き利用することとなったため,購入を見送った。そのために次年度使用額が生じた。今年度あるいは次年度に,当初の計画通りにPCおよびソフトを購入するか必要性があるか否かを今一度研究分担者と十分に協議した上で,最も有効な使用方法にて執行する。
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