研究課題/領域番号 |
18K00552
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研究機関 | 東京医療学院大学 |
研究代表者 |
今泉 敏 東京医療学院大学, 保健医療学部, 教授 (80122018)
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研究分担者 |
籠宮 隆之 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特任助教 (10528269)
青木 さつき 東京医療学院大学, 保健医療学部, 講師 (40809331)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発達障害 / 非流暢性障害 / 音声言語 / プロソディ / コミュニケーション / 構音 / 吃音 / 自閉症スペクトラム障害 |
研究実績の概要 |
脳神経回路網発達に非定型性があると考えられる発達障害(Neurodevelopmental disorders)児・者の社会的コミュニケーションを円滑にする方法を開発する目的で、非流暢性障害(吃音)や自閉症スペクトラム障害のある幼児・成人の自由発話の諸特性を解析した。今年度はまず非流暢性障害の中核症状である音の繰り返し、引き延ばし、ブロックなどの音声現象や心理的緊張などを記載できる音声ラベリング法を工夫し、非流暢性障害を持つ児童及び成人の発話特性を解析した。学齢期前後の児童の発話を解析した結果、発話文の複雑さと構音の難易度に関連する要因が吃音率や非流暢度など発話特性に有意な効果を示すこと、それらの効果は個人差が大きく発達的変化を示すことを明らかにした。さらに、非流暢性障害のある成人の緊張場面での自発発話を解析するために、心理的指標として STAIを、生理的指標として皮膚電導度(EDA)を使用して、吃音頻度・非流暢度やポーズなどの音声プロソディに関連する指標と緊張との関係を解析した。その結果,吃音群では対面場面より電話場面で吃音頻度と STAI がともに上昇し、緊張の認知的制御特性と発話特性が有意に関連することが明らかになった。これらの結果は、非流暢性障害にはメッセージ生成にかかわる脳神経回路網と音声生成にかかわる脳神経回路網に不整合があり、緊張場面でそれが増大することを示唆する。 今後さらに脳神経回路網の非定型性が非流暢性障害とは異なると考えられる自閉症スペクトラム障害の自発話解析を進めるために、ナラティブ題材を開発し音声の録音・解析を開始し、また発話の構文構造や言語運用上の特徴を記載する方法の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は非流暢性障害の中核症状である音の繰り返し、引き延ばし、ブロックなどの音声現象と、心理的緊張など音声以外の付随事象との関係を記載できる音声ラベリング法の検討を進め、非流暢性障害を持つ児童及び成人の発話特性を解析することができ、有意義な成果を得ることができた。また、脳神経回路網の発達上の非定型性が非流暢性障害とは異なると考えられる自閉症スペクトラム障害の自発話解析を進めるためにナラティブ題材を開発し、音声録音と解析方法の検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)脳神経回路網の発達上の非定型性に差があると考えられる非流暢性障害や自閉症スペクトラム障害の自発話解析を進めるために、すでに開発したナラティブ題材をさらに改善し、自発話音声の録音と解析を進める。自発話音声の音韻とプロソディの特徴を記述する方法に加えて、文法的属性やコミュニケーション上の音声言語運用上の特性を解析できるラベリング法を開発する(今泉、青木)。 2)臨床場面で活用できる使いやすい記述方法とするために、1)で示したラベリング特徴を組み込んで自動ラベリングが可能な手法の開発を検討する(籠宮、今泉)。 3)開発した方法を活用して、神経発達障害に特異的な音声プロソディとコミュニケーションを阻害する音声的特徴を明らかにする(今泉、青木、籠宮)。
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次年度使用額が生じた理由 |
自発話音声を録音するための素材つくりと発達障害の音声プロソディ解析に適した韻律ラベリング法の開発に十分な時間をかけたため、実際の音声ラベリング作業に使用予定であった謝金等の支出が予算より少なくなった。自発話音声の録音とラベリングにかける時間が増えるので、繰り越しとなった予算を今年度はその目的に使用する予定である。
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