• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

発達障害における音声プロソディの解析的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K00552
研究機関東京医療学院大学

研究代表者

今泉 敏  東京医療学院大学, 保健医療学部, 教授 (80122018)

研究分担者 籠宮 隆之  大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特任助教 (10528269)
青木 さつき  東京医療学院大学, 保健医療学部, 講師 (40809331)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード発達障害 / 非流暢性障害 / 自閉症スペクトラム障害 / 話し言葉 / プロソディ / コミュニケーション / コミュニケーション脳機能 / プロソディック・ユニット
研究実績の概要

昨年度は非流暢性障害を持つ発達障害児の発話特性を解析し、発話文の構文上の複雑さと構音の難易度に関連する要因が吃音率や非流暢度など発話特性に有意な効果を示すこと、それらの効果には個人差が大きく発達的変化を示すことを明らかにした。今年度は、複数の発話単位(プロソディック・ユニット)が含まれる複雑な発話文の音声プロソディが非流暢性障害に及ぼす影響に焦点を絞って解析した。
日本語音声のプロソディはアクセントを基本とするプロソディック・ユニットが連結して発話文全体のイントネーションを構成する。各プロソディック・ユニットの基本周波数の時間変化パタンは発話文の構文構造とも密接な関係があり、係り受けの関係にあるユニット間を比較すると先行ユニットほど基本周波数のピーク値は高く、後続(受け側の)ユニットほど低くなる特性がある。また、文法上の深い切れ目では長いポーズが出現し、基本周波数の低下はリセットされて高く始まる。このような構造をもった発話の円滑な生成のためには、メッセージを構成する形態素の適正な選択と構文、およびそのプロソディ構築がある程度完成してから発話を開始する必要がある。そうしないと発話途上で破綻が生じて非流暢性を生じてしまう可能性がある。
昨年度開発したナラティブ題材を使用した自発話音声データベースを解析した結果、例えば「たびびとはマ /マントを/を /とってお /お/おおさえてしゃ /しゃがみました。」(/は間)といった例のように「次のユニットの語頭音まで表出しそこで途切れる」という非流暢性症状が観測された。ユニットの最後に後続ユニットの最初の音が現れ、ユニットの切り替えや立て直し、ユニット間のポーズ制御のいずれにも困難を示す症例が観測された。メッセージ生成と、プロソディック・ユニット生成など発話に関わる複数の脳神経回路網間の不整合が日流暢性障害に関与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

昨年度開発したナラティブ題材を使用した自発話音声データベースを解析した結果、非流暢性障害の出現には、プロソディック・ユニットの切り替えや立て直し、ユニット間のポーズ制御のいずれの面においてもプロソディック・ユニットの生成に困難を抱える症例が観測された。これらの結果は、プロソディック・ユニットの生成・制御が非流暢性障害に関係することを示し、メッセージ生成にかかわる脳神経回路網とプロソディック・ユニットの生成・制御に脳神経回路網の機能的不整合が非流暢性障害に関係していることを示唆する。音声学的にも非流暢性障害の音声訓練上も有用な知見が得られた。

今後の研究の推進方策

題材をさらに改善し、自発話音声の録音と解析を進める。自発話音声の音韻とプロソディの特徴を記述する方法に加えて、文法的属性やコミュニケーション上の音声言語運用上の特性を解析できるラベリング法を開発する(今泉、青木)。
2)臨床場面で活用できる使いやすい記述方法とするために、1)で示したラベリング特徴を組み込んで自動ラベリングが可能な手法の開発を検討する(籠宮、今泉)。
3)開発した方法を活用して、神経発達障害に特異的な音声プロソディとコミュニケーションを阻害する音声的特徴を明らかにする(今泉、青木、籠宮)。

次年度使用額が生じた理由

ナラティブ題材の有効性確認と、発達障害の音声プロソディ解析に適した韻律ラベリング法の開発、および解析手法の確立に十分な時間をかけたため、実際の音声ラベリング作業に使用予定であった謝金等の支出が予算より少なくなった。次年度は自発話音声のラベリングと解析にかける時間が増えるので、繰り越しとなった予算を今年度はその目的に使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 言語実験に基づく言語衰退の実態の解明―琉球沖永良部島を事例に2019

    • 著者名/発表者名
      横山晶子・籠宮隆之
    • 雑誌名

      方言の研究

      巻: 8 ページ: 353-378

    • DOI

      978-4-89476-990-8

    • 査読あり
  • [学会発表] Speech Patterns of Children with Neuro-developmental Disorders2019

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Imaizumi, Takanobu Honma, Yoshimasa Makimoto
    • 学会等名
      The 3rd International Symposium on Linguistic Patterns in Spontaneous Speech
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Statistical studies on Japanese sonority by using loudness calibration scores2019

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Kagomiya
    • 学会等名
      Proceedings of Oriental COCOSDA 2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 発達性ディスレクシアの1症例:何を優先して指導すべきか2019

    • 著者名/発表者名
      青木さつき, 大石敬子
    • 学会等名
      日本コミュニケーション障害学会
  • [図書] 音声学・言語学2020

    • 著者名/発表者名
      今泉敏
    • 総ページ数
      306
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      4260041274

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi