研究課題/領域番号 |
18K00555
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
尾鼻 靖子 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60362141)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本語 / ポライトネス / アイロニー |
研究実績の概要 |
今年度においては2項目について研究を行った。一つ目は、敬語を使用した「アイロニー」についてであるが、この分野は英語に関してはかなり研究されてきたが、敬語に関してはまったく数が限られており、アイロニーの要素がある文脈で敬語を使用した際に、敬語は「敬意」を表すというよりもアイロニーを強調するという結論しか見られなかった。ドラマを中心に人間関係や文脈の在り方を調べることにより、アイロニーが見られない発話内容であっても、敬語を使用することでアイロニーとなる場合もあったり、相手の言葉を繰り返すことで自敬表現となり、それがアイロニーを作り出す場合もあることが分かった。さらに敬語が適切であっても過去の出来事をリマインダーとして発言した場合にもアイロニーは作り出されることが分かった。そして、敬語使用のアイロニーの現象は、従来、「命題」があって(つまり、話者の意図が発話の意味と異なるという前提)その矛盾がアイロニーを生むと言われてきたのであるが、敬語を使用した現象は、そういう命題がなくともアイロニーを生む可能性があるというのは新しい発見である。11月の学会でこれを発表し、現在これについて論文を執筆中である。 もう一つは、日本語のポライトネスについて著書を仕上げつつある。Routledge出版社には学習者向けの著書を提出したのであるが、refereesの意見を取り入れ、また編集者からの助言により、理論的な著書に変更することになった。それに至るまで1年近くかかったが、2月にRoutledgeと出版に向けて契約を交わすまでに至った。内容は、従来のポライトネス研究に言及しながらも、日本語にある特徴を明らかにし、日本語のポライトネスの全貌が理解できるように工夫されている。来年度中には仕上げて出版する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集がまだ充分でない。インタビューを行う予定であったが、健康上の問題や本の執筆などで、行う時期を逸した。それから1~2つぐらい適切なドラマあるいは映画を選んでそれもデータにするつもりであったが、購入したドラマは分析に足りる量がなかったため、新たに収集するつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
執筆中の著書を仕上げること。アイロニーに関しては、現在執筆中の論文が終了すれば、さらに1~2本目指したい。現在「呼称」については文献の閲覧を続けているが、データ収集及び論文の執筆に向けてどのような方向性を持たせるかについては、海外研究協力者と話し合うつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究に向けての新しいデータ収集が行われていない。インタビューを行うはずであったが、他のデータ処理や著書の件などで時間が取れず、次年度に持ち越されることになった。またデータとして適切なドラマやスクリプトの購入もするべきであったが、それも次年度に持ち越されることになった(DVDは書き起こしを業者に頼む予定であった)。
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