研究課題/領域番号 |
18K00556
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
松尾 歩 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (20593578)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 名詞優位 / 語彙獲得 / ダウン症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は実験的手法を使ってダウン症児の名詞、動詞の語彙構築プロセスに どのようなバイアスが存在するかを明らかにすることである。とりわけ、発話に遅延のある子どもにも負担が少ないと考えられている選好追視法を使用した実験方法を利用している。2020年までに全国で45名のダウン症を持った被験者からデータを入手した。選好追視法を使ってダウン症児を被験者にするのは、この実験が世界初の例であるが、被験者は負担が少ない手法のためか、全員が実験に参加し3分半の動画を視聴することができた。しかしその一方、取得データをコード化するにあたり、45名中26名分のみのデータが利用できる状態であった。残り19名のデータはセンタリングライトに集中できなかった、あるいは右か左を注視するバイアスが見られたため、使用不可能なものであった。26名のうち19名のダウン症児からは名詞優位が検出されている。これらの19名は全て月齢は3歳以上で、KIDS(キッズ) 乳幼児発達スケール KINDER INFANT DEVELOPMENT SCALEの結果によると発達年齢が2歳以上であった。
健常児のデータと比較すると健常の3歳児は名詞優位の段階を経て動詞優位の段階に移っているのだが、ダウン症児の言語発達において名詞優位の現象が現れるのはおよそ3年の遅れがある。この結果からトリソミーによる知能障がいがダウン症児の語彙発達メカニズムに3年ほどの言語遅滞に影響を与えることが解明された。また、健常児と知的障がい児がタイミングに差はあるものの、両グループとも語彙獲得において、同じバイアスを使用すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
採択された国際学会が2つとも新型コロナ感染症のため中止、または延期になったため。またコロナ禍のため保育園での追加実験が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
41st annual Symposium on Research in Child Language Disorders及び15th Congress of the International Association for the Study of Child Languageの2つの学会に採択されているが、両方とも1年延期され、2021年夏に開催予定である。この2つ学会に向けて、比較分析を実施し、発表の内容の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
採択された国際学会が2つとも新型コロナ感染症のため中止、または延期になったため学会参加費や旅費を使うことができなかった。またコロナ禍のため保育園での追加実験が実施できなかったため被験者への謝礼及びリサーチアシスタントの謝礼を払う必要がなかった。
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