本研究では、ロシアのシベリア地域で話されているチュクチ語とモンゴル国と中国で話されているモンゴル語の動詞の他動性に関する比較対照研究を行なった。研究を通して、北東アジアにおいては、動詞の自他対応が使役化という類型に集約しうる可能性が高い一方で、他動性に関しては、動詞の屈折体系により自他の区別が明確になされるチュクチ語がある一方で、形態的に自他の区別がつきにくいモンゴル語があるために、「北東アジア諸言語」として括れない多様性が明らかになったのである。また、能格言語であるチュクチ語と対格言語であるモンゴル語の動詞の結合価の変更のプロセスが互いに異なることを明らかにした。
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