研究課題/領域番号 |
18K00570
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石原 由貴 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40242078)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 疑問とその答え / 発話行為 |
研究実績の概要 |
2021年度は、質問に対して述語を繰り返す形で返答する場合に現れるverum focusについて検討した。具体的には、「花子はりんごを食べなかったよね?」という否定を含んだ命題の真偽を確認する問いに対して、「ううん、食べた食べた。」と肯定形の動詞を繰り返して否定的命題を打ち消して答えたり、「そのケーキ、本当においしいの?」という真偽を正す問いに対して、「うん、おいしいおいしい」と形容詞を繰り返して答えるような場合に、命題の真偽を強調するverum focusが置かれていると考えられる。この現象はドイツ語でHohle (1992)によって観察されて以来、さまざまな言語で研究が行われているが、それを文の極性の焦点化として捉えるべきなのか、焦点とは別の、lexical operatorによって現されていると捉えるべきなのか等、理論上の扱いについての議論が続いている。日本語では、平叙文に限らず、「急げ急げ。」「押すな押すな。」のような命令文や、「行こう行こう。」のような勧誘表現においても、述語の繰り返しによる強調表現が現れることから、真偽値を持たない文における述語の繰り返しを、質問の答えの中に現れる述語の繰り返しと同じように扱うことができるかどうかについて考察を行なった。そして、述語の繰り返しを話者の発話の力を強調する形式としてひとまとまりに捉え、verum focusもその一種と考える可能性を追求した。また、verum focusをもつ文が同時に程度の強調の解釈を許す場合があることがあることから、程度の強調との相違点についても考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスに対応するために時間を取られ、当初の計画どおりに研究時間を確保することが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、日本語以外の言語におけるverum focusについての研究を検討し、日本語において、質問の答えの中に生じる述語の繰り返しによって表されるverum focusと、その他の環境で生じる述語の繰り返しに関する考察を進め、学会発表などによりフィードバックを得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で学会出張ができなくなり、予定していた旅費を使用することがなかった。 今年度も旅費を使って学会に出席することができるようになるか不明であるが、必要な資料を購入し、オンラインの学会に出席するなどして研究を進めていく予定である。
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