研究課題/領域番号 |
18K00581
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研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
時本 楠緒子 尚美学園大学, 総合政策学部, その他 (10435662)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 実時間言語コミュニケーション / 脳波 / 脳間同期 / 同期的神経活動 / hyperscanning / 発生源推定 / 独立成分分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、実時間社会的相互作用としての言語コミュニケーションの神経基盤を二名同時の脳波計測によって考察することを目的とする。これまでの相互作用実験課題が言語の特性をよく反映していないことに鑑み、 言語の生産性・文脈依存性を捉えた協調課題を二名の実験参加者に課し、個々の参加者から同時に脳波を計測する。そして、参加者脳内・脳間の同期的神経活動を解析することで、実時間言語コミュニケーションにおける対人相互作用に特化した神経活動の検出を試みる。さらに、計測された二者の脳波に最先端の解析技法を適用し、同期的神経活動の発生源推定を行うと共に、神経活動の時系列・因果関係を解析することで、対話における実時間言語コミュニケーションモデルの構築を試みる。 本研究では、二者間の実時間言語コミュニケー ションにおける脳波を多チャンネル脳波計によって計測し、個人間相互作用に固有の同期的神経 活動を検出することを目指す。そこで平成30年度は、多チャンネル脳波測定を可能にするため、新たに脳波計測用の電極・キャップを購入して脳波計測装置の増設を行った。すでに新しいシステムの動作確認を行い、脳波計測ができるまでになっている。また、脳波のみならず、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)の知見を参考にして、脳内の特定位置における神経活動の強度を解析するプログラム、さらに、個人の脳波における2電極間 のphase-locking value (PLV, 二者間の神経活動同期の指標として、2電極間で脳波の位相差が一定時間内にどの程度維持されているかを示す位相固定値)を解析するためのプログラムも完成していて、二者の脳波解析にそのまま利用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進行が遅れているのは、課題の決定に手間取っているためである。現代の神経科学は個人間の相互作用に大きな関心を向けていて、2者の脳活動を同時に計測する実験も多く行われるようになっている。但し、ここでの課題の多くは協調的運動や、メッセージの受動的解釈であることが多く、言語コミュニケーションに特徴的な文脈依存性と生産性に欠けている。したがって、本研究では、運動制御に直結せず、また、できる限り言語コミュニケーションの生産性を反映した課題を用いたいと考えている。具体的には、実験参加者2名に制限時間を設けたしりとり課題や、言語を介した協調行動として俳句などの共同制作課題を課すことを計画している。しかしながらこのような実験の前例がなく、また、あまりに難度の高い課題では、協調行動が生起しない可能性もある。加えて、2名同時の計測については、実験参加者の調整が難しく、実験の失敗が許されない。慎重な課題の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
脳波計測用の機器は準備できたが、脳波計測に用いる消耗品(実験参加者の頭皮につけるジェルやシリンジ、ジェル注入用の針、キムタオルや洗髪時のシャンプ-等)に加え、実験参加者への謝金が必要である。また、成果発表用の旅費および欧文open journalへの投稿を想定して論文掲載費用を申請する。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳波計測実験に用いる消耗品(実験参加者の頭皮につけるジェルやシリンジ、ジェル注入用の針、キムタオルや洗髪時のシャンプ-等)に加え、実験参加者への謝金が必要である。また、成果発表用の旅費および欧文open journalへの投稿を想定して論文掲載費用を申請する。
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