研究課題/領域番号 |
18K00585
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
榮谷 温子 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 講師(非常勤) (30376826)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 限定名詞句 / 人称代名詞 / 関係代名詞 / 総称指示 / 特定化 / 一般化 / 種 |
研究実績の概要 |
1.限定名詞句の一種である人称代名詞に関して、特に the pronoun of the fact (Damiir al-sha'n) と呼ばれる人称代名詞についての論文を出版することができた。the pronoun of the fact に関しては、そもそも指示機能があるのかどうかなど、従来から多くの議論がなされたきた。今回は、主にコーラン112章1節を例にその議論をまとめるとともに、文法書だけでなくコーラン解説書まで視野に入れて分析をおこなった。 2.「特定」の対概念である「一般」という用語について、総称指示にかかわる「種(しゅ)」の概念について口頭発表を行なった。特定化は唯一指示と非限定との中間的存在、一般化は総称指示と非限定との中間的存在と捉えられているが、一般化の概念の確定は特定化のそれより遅かった。その原因として「種」の概念の確定の遅れが考えらることを、文法書の記述の変化を負いながら明らかにした。 3.限定名詞句の一種である関係代名詞を取り上げ、文法学におけるその扱いの変遷について、特に、イブン・アキール(d. 792/1367)とイブン・ヒシャーム(d. 761/1359)の記述に焦点を当てて、口頭発表を行なった。 4.ローマ第3大学でのアラビア語文法学の研究会議に出席し、「一般」という概念について口頭発表を行い、参加した研究者たちからコメントや資料を頂くことができた。今後、論文を執筆するための貴重な土台となった。 5.米国アラビア語教員協会に理事(有期)として出席し、同時に開催されていた北米中郷学会の発表も一部だが聴くことができ、アラビア語学およびアラビア語教育に関して知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、東京でアラビア語文法学の研究会議を開催する予定であったが、コロナ禍で実現できなくなってしまった。しかし、代わりに Rome Tre University において会議が開催され、その会議に参加し、口頭発表を行うとともに、他の各国の研究者の研究成果を聴くことができた。 目下、本研究課題のテーマである限定・非限定について、これと密接な関係があり、また、特定指示・総称指示といった指示の機能とも連動し、また統語の面でも無視できない範疇である、特定・一般の概念について分析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.Rome Tre University での口頭発表の際、会議に参加していた複数の研究者より得られたコメントや資料をもとに、特定化と一般化、特に一般化について論文をまとめる。これにより、特定・一般という概念の側から、限定・非限定の概念のありようをあぶり出すことをしてみたい。 2.限定名詞句の一種である関係代名詞について、文法学における記述などをとおして、さらに分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、日本でアラビア語文法学に関する国際会議を開催する予定であったが、コロナ禍とそれに伴う水際対策のため、海外の研究者に来日していただくことが困難となり、開催することができなかった。そのため、会議費用のあまりが生じてしまったことが最大の原因である。 2023年度には、国際学会への参加(カナダのモントリオールにて、米国アラビア語教師協会および北米中東学会)が見込まれ、その旅費として使用するとともに、その他の国内学会参加や資料収集の費用として支出の見込みである。
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