研究課題/領域番号 |
18K00587
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
新井 学 成城大学, 経済学部, 准教授 (20568860)
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研究分担者 |
馬塚 れい子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (00392126)
大石 衡聴 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (40469896)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抑制機能 / 眼球運動測定 / 文処理 / 予測 / 実行機能 / 読み / 言語理解 |
研究実績の概要 |
本研究課題の2年目となる2019年度は初年度の研究結果をもとに、子供の抑制機能と言語理解能力の関係性を調査する実験を行った。具体的には、5歳から8歳までの子どもを対象とし、オンラインでの日本語の文理解プロセスにおける予測と再分析、及びそれらと認知機能の一つである抑制機能との関連について、視覚世界パラダイムを用いて検討した。一時的に誤った解釈に陥るようなガーデンパス文の処理では、解釈の再分析が強いられることが知られているが、最終的に正しい解釈を得る際に、最初に構築した誤った解釈を抑制する過程が存在すると考えられる。抑制機能の能力が高い人ほど、誤った解釈を導くような文の処理がより容易に行われるという仮説のもと、抑制機能の発達段階にある子どもに着目し、眼球運動測定実験を行った。その結果、予測や再分析を反映していると考えられる注視率と、抑制機能の能力を測るGo/No Go課題の成績との関連がみられ、解釈の逸脱を含む文の理解において、抑制機能の個人差が影響している可能性が示された。 この研究の成果は今年2月の国内の研究会(「第5回坂本勉記念神経科学研究会」)で口頭発表を予定していたがコロナウイルス感染症の関係で中止となった。また6月開催予定だった日本言語学会第160回大会においても口頭発表が予定されていたが学会自体は中止となり予稿集の発表のみとなっている。現在9月にドイツポツダムで予定されている国際学会AMLaP (The Annual Conference on Architectures and Mechanisms for Language Processing) 2020に投稿して結果を待っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記した通り、昨年度行った子供を対象とした実験から非常に価値の高い結果が得られた。学会において口頭発表で採択されるなど反応もよく、本研究を次のステージに進める準備が整ったものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の主な課題は、成人を対象とした脳波計測実験の遂行と、前年度までに得られた研究結果の国内外の学会において発表すること、そしてそこで得られたフィードバックを生かして論文にまとめあげ国際学術雑誌に投稿するまでを目標とする。ただ、現在のコロナウイルス感染症の影響で実験室における実験が遂行できるか確証がない。それゆえ、脳波計測実験の遂行が本年度中に実行できるかどうかは不確実である。その場合には、今まで得られた研究成果をまとめ上げることに専念し、2020年度中に世界トップレベルの学術雑誌に論文を投稿することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度中に共同研究者である立命館大学の大石衡聴氏と脳波計測実験の遂行を予定していたがコロナウイルス感染症の影響で実験を行うことができなかった。開催時期については未定であるが、本年度の遂行を予定しており、繰り越し分は主に本脳波計測実験の実験補助者・参加者への謝金に使用する予定である。同じ理由で国内外の学会が軒並み中止となっており、旅費として計上した配分金も本年度に繰り越している。本年度学会が開催できるかどうかは不明であるが、現時点では参加できる予定で旅費を計上している。
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