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2020 年度 実施状況報告書

言語理解における処理負荷の要因と抑制機能の役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K00587
研究機関成城大学

研究代表者

新井 学  成城大学, 経済学部, 准教授 (20568860)

研究分担者 馬塚 れい子  国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (00392126) [辞退]
大石 衡聴  立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (40469896)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード抑制機能 / 予測的眼球運動 / 言語理解 / 実行機能
研究実績の概要

本研究プロジェクトの最終年度に当たる昨年(令和2年度)は、事象関連電位計測実験の遂行を予定していたが、新型コロナウィルス感染症の影響により実験室を使うことができず、実行することができなかった。ゆえに、今年度は昨年までに収集したデータを分析・発表・論文化することに集中した。
その一つの成果として、8月に行われた国際学会(第26回Architectures and mechanisms for language processing conference, University of Potsdam, オンライン開催)にて、この研究成果を発表することができた。元々、「予測エラーの負荷」と、文解釈の破綻を引き起こす意味的逸脱による処理負荷(「意味逸脱負荷」)は質的に異なることを実証することを目標として挙げていたが、この子供を対象とした研究ではさらに、初分析による解釈が「意味逸脱負荷」を引き起こす文であっても、解釈が心的イメージ(mental imagery)を構築することができる場合(a)(足のあるジュースが歩いているという想像ができる)と、できない場合(b)(何を意味するのか想像できない)では、処理負荷に有意な差があり、処理負荷のより高い前者でより実行機能による認知的な抑制が必要になることが明らかになった。
(a) ジュースがゆっくり歩いていた女の子にこぼれたよ。
(b) ジュースをゆっくり歩いていた女の子に渡したよ。
また、本研究のもう一つの重要な結果として、過去の研究では文理解における抑制機能の影響は、構造的曖昧文の理解において、曖昧性を解消する情報が出現した後の「再分析」の段階でのみ報告されていたが、本研究では曖昧性が解消される情報が出現する前の「予測的文構造分析」の段階で観測された。これによって、文理解において、文構造の曖昧性を解消する情報が出現した後の再分析過程だけでなく、予測的に正しい文構造を分析する過程においても抑制機能が関係していることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度予定していた事象関連電位計測調査を遂行することができなかった。
ゆえに研究期間の1年延長を申請し認められた。

今後の研究の推進方策

令和3年度は昨年予定していた事象関連電位計測調査を本プロジェクトの最終実験として行うことを目標として掲げる。
これによって、どのような文のタイプに抑制機能が関連しているのか貴重な知見が得られることが期待される。
しかし、新型コロナウィルス感染症の状況は現在もかなり不透明であり、予定する実験は被験者への接触は避けられない実験形態(頭皮に電極を直接装着する)ゆえ、実際に本実験を行うことができるかどうかは明らかではない。
その為、もし事象関連電位計測実験を含め実験室を使った実験が実行できなかった時には、9月を目途に判断し、"Inquisit 4 Web"などのウェブ上で心理テストを行うツールを用いて、オンライン実験を行うことを考えている。オンラインデータ収集の利点としてサイズの大きいデータが収集できることが見込まれ、これによって、前年度までの実験データとの比較をすることで新しい知見が得られることが期待される。

次年度使用額が生じた理由

以下の2つの理由により次年度使用額が生じた。1)昨年予定していた事象関連電位計測調査が新型コロナウィルス感染症の影響により実行することができなかった。2)共同研究者の馬塚れい子氏が昨年度「特別推進研究」に採択されたことで、本研究プロジェクトの分担者を辞退した。
延長された翌年度分に請求した額の使用計画は以下の通りである。1)新型コロナウイルス感染症の状況がある程度収束し実験室の使用が可能であれば、事象関連電位計測実験を共同研究者である大石衡聴氏と共に遂行する。その場合実験補助者(1名)及び被験者(約30名)への謝金を支払う。そして、研究結果を3月にアメリカで行われる国際学会(CUNY Conference on Human Sentence Processing)に出席し発表する。2)もし状況が収束せず、実験室の使用が現実的に不可能である場合には、9月を目途に判断し、"Inquisit 4 Web"などのウェブ上で心理テストを行うツールを用いて、オンライン実験を行うことを考えている。当然脳波計測を行うことはできず、反応時間をベースにしたデータ収集となるが、オンラインデータ収集の利点としてサイズの大きいデータが収集できることが見込まれ、これによって、前年度までの実験データとの比較をすることで新しい知見が得られる可能性が高い。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] An Extra Cue Is Beneficial for Native Speakers but Can Be Disruptive for Second Language Learners: Integration of Prosody and Visual Context in Syntactic Ambiguity Resolution2020

    • 著者名/発表者名
      Nakamura, C., Arai, M., Hirose, Y., & Flynn, S.
    • 雑誌名

      Frontier in Psychology

      巻: 10 ページ: 2835

    • DOI

      10.3389/fpsyg.2019.02835

    • 査読あり
  • [学会発表] Development of children's ability to predict and revise during language comprehension and its relation to their inhibitory control2020

    • 著者名/発表者名
      Manabu Arai, Saki Tsumura, and Reiko Mazuka
    • 学会等名
      THE 26TH ARCHITECTURES AND MECHANISMS FOR LANGUAGE PROCESSING CONFERENCE
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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