研究課題/領域番号 |
18K00589
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
原 由理枝 早稲田大学, 理工学術院, 客員主任研究員(研究院客員准教授) (60802668)
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研究分担者 |
折田 奈甫 東京理科大学, 理工学部教養, 講師 (70781459)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 左方周辺部 / 形式意味論 / 語用論 / 証拠性 / モダリティ / 神経言語学 / コーパス研究 / イントネーション |
研究実績の概要 |
本研究は、統語構造の左方周辺部の意味と語用の理論及びその経験的実証を探求することを目的としている。 平成30年度は、主として、日本語の証拠性「ヨウダ」とモダリティ「ダロウ」の経験的、神経言語学差異を調査するため、コーパスを用いた計量的な測定と、事象関連電位を用いた脳波実験の予備実験および本実験を行った。結果、モダリティと比較して、証拠性を表す助動詞の使用は、因果関係に依存することが判明し、また、脳波実験の結果から、複数の可能世界を処理しなければならないモダリティは、証拠性よりも、処理負荷が高いことが示された。以上の結果を研究会等で発表し、令和元年度、国際学会等で発表が採択された。 Mengxi Yuan氏(Jinan University)との共同研究である、中国語の談話助動詞が、どのように、AssertionやQuestionなどの言語行為を変更するか、Farkas & Bruce(2009)のスタック化されたCommon Groundを用いて説明した論文が、国際学術誌に掲載された。 日本語の助動詞ダロウ、イントネーション、Clause type、および意味層の相互関係を探求する研究を複数の研究会で発表し、論文を学術雑誌に提出した。具体的には、自然さ判断テストを用いて分布を精査し、Paratactic associationというイントネーションと助詞の統語構造に対応する意味計算規則を提案し、Inquisitive Semanticsの理論を用いて形式的意味を与えた。令和元年度は、このParatactic associationの意味計算規則を他の言語の現象に応用することを試みている。 最後に、已然形+バの用法の歴史的変遷を、先行文献とコーパスを用いて計量的にデータを取り、進化ゲーム理論を用いて説明する研究をスタートさせ、研究会等で発表した。次年度、国際学会での発表が採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に行う予定の実験が計画通り遂行され、理論の予測に合う結果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、初年度に得られた研究結果を国際学会、国際学術誌で発表するほか、日本語の証拠性とモダリティの研究を、Self-paced readingの実験に応用し、神経言語学的実証との違いを検討する。理論的には、Rational Speech Act理論を使用したモデル化も検討する。 また、中国語普通話と広東語の疑問文と談話助動詞に関するSelf-pace readingおよび脳波実験を準備中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験参加者が当初の予定より少ない人数で結果が得られたため、翌年度の実験の参加者への謝金として使用する。
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