研究課題/領域番号 |
18K00589
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原 由理枝 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (60802668)
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研究分担者 |
折田 奈甫 早稲田大学, 理工学術院 英語教育センター, 准教授 (70781459)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文末助動詞 / 疑問文 / モダリティ / バイアス / 因果関係 / 条件文 / 語用論 / 構成意味論 |
研究実績の概要 |
主に理論的研究および、コーパスを用いた通時的研究を実施した。 まず、日本語の文末助動詞「だろう」の意味計算、イントネーションおよび統語の相互作用をInquisitive semanticsのフレームワークと、新しく提案した言語行為を使用条件(Use condition)の基本タイプとしParatacitic Associationの規則をもつタイプ付き形式言語を用いて分析した。現在論文の改訂中である。 Yuan Mengxi氏(Jinan University)との共同研究で、中国語の極性疑問文(ma疑問文、否定疑問文、A-not-A疑問文)にみられるバイアスは話者バイアスではなく文脈バイアスで分析するのが適切であると主張した。文脈バイアスはSubjective probability distributionと文脈のテーブルモデルを用いて形式化した。またそれぞれの疑問文の解釈は語用論的競争で説明できると主張した。現在論文の改訂中である。 英語のUnconditional構文をInquisitive semanticsと条件文のスタックモデルを用いて分析し、条件文の解釈は2または3段階の過程をへているとするSuppositionalアプローチを用いるのが適切であると主張した。執筆原稿は現在査読中である。 日本語の已然形+バとドイツ語の接続しwenn/wande/wannの意味変遷が原因理由から条件文へと平行していることに注目し、日本語歴史コーパスおよび、ドイツ語の文献調査からデータを集め、両者の慣習的語彙意味論としての機能は条件文であり、原因理由および時をあらわす用法は語用論におけるI-implicatureから導き出されると主張した。現在原稿は査読中である。 田辺智也氏(北海道大学)との共同研究で日本語の省略におけるスコープの解釈は、その発話のQuestion under discussionに依存することを主張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍であることから、国内および海外の脳科学実験は実行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染状況にもよるが、延期されていた証拠性とモダリティの事象関連電位を用いた脳科学実験と自己ペース読文実験などを行いたい。 また、条件文と疑問文の理論的研究、ドイツ語と日本語と意味変遷の語用論を、進化ゲーム理論の枠組みで分析する予定である。 また田辺智也氏(北海道大学)との共同研究のQuestion under discussionが省略の解釈に与える影響について調査する容認度判断実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はコロナ禍の影響で、国内国外の実験が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、脳科学実験、自己ペース読文実験、容認度判断実験の被検者への謝金、実験を補助する短期支援員への謝金、実験のための出張費に使用する予定である。
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