研究課題/領域番号 |
18K00592
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
野村 昌司 中京大学, 国際教養学部, 教授 (60410619)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | pair-Merge / Chomsky (2015) / Labeling Algorithm / Passives / Causatives / MERGE |
研究実績の概要 |
平成30年度は、Chomsky (2015)の枠組みで提案された対併合の有用性を検証した。まず、Epstein, Kitahara, and Seely (2016)によって明らかにされたChomsky (2015)で提案された対併合に関する矛盾点を概観し、Epstein, Kitahara, and Seelyとは異なる解決案を提示した。具体的には、Chomsky (2015)を精査し、仮定されていた規則の適用順序の通りに派生を見ると、label付けがなされる段階ではRはv*に対併合していないため、Rはコピーではなく、Rそのものがそこに存在している。よってR自体が派生したphaseとして作動しているので、Chomskyが主張しているようにlabel付けが成される際にコピーである要素はLabeling Algorithmにおいて見えないということになると主張した。その上で、bridge verb構文については別の提案をしている。すなわち、規則の適用順序は自由であり、対併合がlabel付けの後に起こる場合は他動詞文を生成し、目的語要素が移動する前に対併合が起こる場合はbridge verb構文などを生成すると主張した。またこの分析は日本語の受動文や使役構文にも応用でき、形態的には同じだが統語構造的には異なる3つのタイプの受動文や使役文の述部構造に対して新しい提案を提示した。 これらの研究成果は、2018年8月(於:国立国語研究所)、9月(於:コネチカット大学)、12月(於:UCLA)に発表した。また現在Chomsky, Gallego, and Otto (2019)の枠組みで対併合を捉え直す研究を北原氏(慶應義塾大学)、大宗氏(関西外国語大学)、大石氏(東北学院大学)らと協同で進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況としては、やや遅れていると言える。理由は所属する大学の大規模な改革に深く関わっており、予想以上に校務に時間を取られてしまっているためである。研究実績の概要で触れた研究プロジェクト以外にthat-trace効果に関する研究も行う予定であったが、2019年度以降に持ち越しとした。Chomsky, Gallego, and Ottoの論文も2019年に入って新たにアップデートされた論文がLingBuzzに掲載され、旧バージョンと合わせて現在その論文を慶應義塾大学言語文化研究所での研究会を中心に精読・ディスカッションし、理解を深める作業を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、LingBuzzに新たにアップされたChomsky, Gallego, and Otto (2019)の枠組みで対併合を捉え直す研究プロジェクトを引き続き進める。また2018年度に実施できなかったthat-trace効果に関する研究を2019年度中に行う。対象としている現象が形態音韻論とも関係するため、形態音韻論の研究にも目を向け、対併合の姿を形作る。2020年度は、それらの研究結果をもとに、更に理解を深め、対併合に関する研究論文を専門誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況にも記載したが、校務が予想以上の業務量となり、研究にかける実質的時間を奪われたことが大きな理由である。そのため予定していた研究プロジェクトの一部も次年度に繰り越している。よってその研究プロジェクトのために次年度に使用する。
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