研究課題/領域番号 |
18K00596
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大西 博子 近畿大学, 経済学部, 教授 (60351574)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中国語方言 / 江蘇省 / 通州 / 入声 / 舒声化 / 南通 / 金沙 / 二甲 |
研究実績の概要 |
①研究の目的 中国語諸方言は、中国の北部全体および西南部にかけての広大な地域に分布する北方方言と長江以南の東南部に分布する南方方言の二群に大別され、その差異はきわめて著しい。よって、この二群の接する地域においては、言語接触による興味深い現象を観察することができる。本研究は、南方方言の一種である呉語と北方方言の江淮官話とが接しあう長江河口北岸に位置する南通市通州区における方言を対象とし、その地で観察される入声舒声化と呼ばれる声調変化に着目し、言語接触によって中国語の声調が如何に変化していくかを追究するものである。特に入声と呼ばれる声調は、現代中国語(普通話)ではすでに失われているため、その入声に変化が生じ始めている通州方言の実態は、中国北方方言における入声消滅の原理を解明する上で、有力な手がかりを与えてくれると考える。 ②研究実績概要 通州での方言調査は、金沙と四甲の2地点において、2018年8月12日から15日の間に行った。現地では、老中若の異なる年齢層から、男女1ペアずつ各地8名の発話者を選抜し、二百字あまりの字音を録音した。今年度は、金沙での録音データを主に分析し、発話者間のデータを平均化し、金沙方言における声調の持続時間と調値を算出した。また過去に調査したことのある二甲という地点における調査結果と金沙との分析結果を対比させながら、通州方言にみられる入声舒声化の地域差や年齢差について考察し、周辺方言との比較も行いながら、両地点における入声舒声化の発生原理についても分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①方言調査について 当初の計画通り、新たに2地点における方言調査が行えた。当初の計画では、方言調査を夏と春の年2回実施することを予定していたが、夏の1回で予定していた2地点における調査が完了したため、春に行う調査は取りやめた。取りやめた分の予算は、国内における音声学セミナ―研修や資料収集費用に充てることができた。 ②研究発表について 当初の計画通り、当該年度に実施した方言調査の分析結果を、国際呉方言学会において発表することができた。また、過去に調査した地点と新たに調査した地点における比較分析を通して、通州方言における実態をより多角的に観察することができ、新たな知見を増やすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
①4月から8月までの予定 2018年度に実施した方言調査において、まだ報告ができていない地点(四甲)における音声分析をすませる。分析結果は、2019年8月27日に予定されている漢語方言研究会にて発表する。 ②9月から12月までの予定 通州地区において、新たに2地点における方言調査を行う。調査方法は従来と同じく、異なる年齢層から男女1ペアずつを選抜する。調査地点は、入声舒声化がより盛んに観察される江淮官話地域において行う。 ③1月から3月までの予定 方言調査の分析結果をまとめる。
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