研究課題/領域番号 |
18K00598
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
小川 暁夫 関西学院大学, 文学部, 教授 (00204066)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 体験 / 知識 / 機能類型 |
研究実績の概要 |
2018年度は、言語における体験と知識の機能類型に関して、データ収集を行い、関連書籍を読み込むことでそれらの分析を行った。 具体的には、ドイツ語の与格構文と日本語における二重主語構文および被害受身文を背後からつかさどる根本機能、つまり、それらがいかにして文の「項argument」を拡大するかを究明した。また、ドイツ語の非人称構文(”Mir ist kalt”)と機能を同じくする日本語の無主語構文(「寒い」)の並行性、つまり、この二つの構文が主語の出没に関して対応を示すこと、そしてその要因を明らかにすることを目指した。また、ドイツ語の不定詞構文と日本語の動作名詞文の比較対照を行った。そこでは、従来の研究でとりわけ看過されてきたドイツ語のsein+不定詞(”Peter ist essen")の分析を行うとともに、日本語における動作名詞文(「「太郎は食事だ」)が根本機能を同じくすることを示した。両者は話し手にとって眼前で生じる事象ではなく「不在態absentive」であり、類似の機能を担うことを明らかにした。さらに、ドイツ語における「心態詞 Abtoenungspartikel」が話し手と聞き手による体験および知識の操作と関連していることを「終助詞」など日本語の機能類型にも鑑みて考察した。 概略、ドイツ語と日本語という系統的にも地理的にも隔絶した2言語が「体験」と「知識」の表現に関して別の言語「類型」でありながら同一あるいは類似した「機能」を有していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題はおおむね順調に進捗している。 日独対照研究、言語類型論を専門とする研究者との打ち合わせを行った(慶応大学、田中慎氏) 刊行物としては ・論文「意味付与の原理―ドイツ語を例に(『KGゲルマニスティック』第21・22合併号.関西学院大学文学部・ドイツ文学研究室年報、pp.41-55) ・単著書Grammatik der Bedeutungsstiftung(『意味付与の文法』Stauffenburug出版、ドイツ、印刷中) がある。
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今後の研究の推進方策 |
与格構文と日本語における二重主語構文および被害受身文、ドイツ語の非人称構文と日本語の無主語構文、ドイツ語の不定詞構文と日本語の動作名詞文、ドイツ語の心態詞と日本語の対応物についてさらに深く掘り下げる。体験と知識の表現類型を日独語を手掛かりに精緻化し、機能類型の異同のパターンを構築する。 ・言語類型論の専門家と引き続き研究打ち合わせを行う。 ・アジアゲルマニスト会議(8月、札幌)に参加し、研究発表を行う。 ・国際ゲルマニスト会議(2021年8月、イタリア・パレルモ)で分科会の議長を務めるとともに研究発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
単著書「Grammatik der Bedeutungsstiftung(意味付与の文法)」の出版が2019年度にずれこんでいるため。これはドイツの専門出版社であるStauffenburg社から刊行されるが、出版社でのネイティヴチェックと最終の製本のアレンジがいまだ進行中であるためである。 また、2019年度にはドイツで2編の論文、日本で1編の論文を出版する予定である。
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