研究課題/領域番号 |
18K00601
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
吉田 夏也 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 理論・対照研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (60316320)
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研究分担者 |
北原 真冬 上智大学, 外国語学部, 教授 (00343301)
白勢 彩子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00391988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本語 / 母音 / 無声化 / レキシコン |
研究実績の概要 |
1:本年度は、無声化が生起しやすい環境で無声化を起こしていない刺激(A)と、これとは逆に無声化が生起しにくい環境で無声化が起きている刺激(B)を作成した。これを使用して、ディスプレイ上に単語のペアを提示したのち被験者に刺激音声を提示し、ペア単語のどちらかを判断させて、音声提示からの反応速度を計測するという実験を作成した。7名の被験者に対して、この実験を実施したところ、刺激(A)に対する反応速度が通常の音声と比較して遅くなっており、無声化がレキシコンに記載されている可能性が確認された。 この結果に関して、一般化線形混合モデルを使用して統計的計算をおこなった。このモデルにおいては、被験者と刺激をランダム要因とし、実在語・無意味語とマッチング(無声化環境と生成された母音の間で矛盾が生じているか否か)を固定要因とした。計算の結果、マッチング要因は刺激(A)に対する反応時間に有意に(<.001)影響を与えていることが明らかになった。この実験結果に関しては、2018年12月に日本音声学会例会で発表をおこなった。また、その後の知見を取り入れた実験結果を国際学会(国際音声科学会議:ICPhS)に投稿して採択された(2019年8月に発表予定)。 2:予備調査として、子供の音声が収録された音声データベース中の無声化を観察した。使用したデータベースは、「日本語音声おける韻律的特徴の実態とその教育に関する総合的研究(重点領域研究「日本語音声」)」およびCI-AIR(名古屋大学統合音響情報研究拠点)による「子供の声データベース」(国立情報学研究所 音声資源コンソーシアムより入手)である。2つのデータベースに収録されている音声を分析したところ、小学2年生から6年生までの児童が発話した音声中の無声化は、成人とほぼ同じ傾向を示しており、言語発達の早い段階で無声化が獲得されていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな実験を構築して、実験結果から本研究の目的である無声化の心内辞書における記載状況に関する一定の知見を得られることができたたため。また、この結果を国際学会に投稿して、採択されたことから外部機関による一定の評価も得られたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
1:2018年度の研究成果を発表する 2:実験精度を向上させるために視線追跡装置を組み込んだ実験を作成し、実験を実施する。 3:幼児の発話を観察するための実験を作成して実験を実施する
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:本研究で使用する視線計測機器に関しては、交付前に国内数社に問い合わせをおこない、その際に提示された価格を参考に取得額を想定した。しかし、その後、海外で同程度(以上)の観測精度を持つ機器が発売されているとの情報を得て、調査したところ、予定よりもかなり低価格であったため、これを購入した。したがって物品費に余裕が生じたためである。 使用計画:追加の補助的な計測機器や消耗品の購入にあてる予定である。
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