研究課題/領域番号 |
18K00606
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岡部 嘉幸 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80292738)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 近世語 / 江戸語 / コーパス / 人情本 / 洒落本 |
研究実績の概要 |
本研究は、大きく(ア)精密な形態論情報および文脈情報を付与した近世語コーパスの構築と、(イ) (ア)のコーパスに基づく統計的手法による近世語文法の「通説」の再検証および新事実の発見という2つの目的をもつ。 2020年度は(ア)として、研究代表者が共同研究員となっている国立国語研究所が構築している「日本語歴史コーパス」(CHJ)のサブコーパスである「江戸時代編Ⅱ 人情本」に、本研究課題が構築した文脈情報(話者名、身分、性別など)の実装を行うための打ち合わせをオンラインにより数回行い、実装へのスケジュール調整を図った。しかし、covid-19感染症の流行の影響で対面での打ち合わせが実施できず、文脈情報の実施には至らなかった。 また、(イ)として、研究代表者がグループリーダーをつとめている国立国語研究所共同研究プロジェクト「通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開」コーパス活用班近世グループにおいてオンラインで研究会を主催し、連携研究者や本研究課題と関連をもつ研究者と近世語文法や近世語コーパスに関する情報交換や意見交換を行った。また、人情本コーパスと洒落本コーパスを利用して、会話における丁寧形の使用、非使用がどのような要因(たとえば、話者属性(特に身分と性別)やテキストジャンルなのか、など)によって生じるのかについて基礎的な分析を行ったが、(ア)の高精度コーパス構築の遅れの影響で、統計的な手法を用いた分析を行うことはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度中に実装予定であった、日本語歴史コーパスのサブコーパス「江戸時代編Ⅱ 人情本」への文脈情報の付与が、covid-19感染症の流行によって打ち合わせが制限されたこと、により、間に合わなかったため。 また、高精度コーパスの構築が間に合わなかったこと、さらに、covid-19感染症の流行によるオンライン授業の実施にともない、オンライン授業のコンテンツ作成に大幅な時間がとられたことによって、人情本、洒落本話者における丁寧語の使用・不使用の要因の基礎的な分析はできたものの、統計的手法を用いた本格的な分析には及ばなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究代表者が共同研究員となっている国立国語研究所の共同研究プロジェクト「通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開」とオンラインによる打ち合わせを複数回開催するなどして、より密接な連携をとり、2021年度中にCHJサブコーパス「江戸時代編Ⅱ 人情本」に文脈情報を実装し、広く研究者に公開することを優先的な目標として、研究を遂行する。 また、国立国語研究所の共同研究プロジェクトと連携しながら、当該コーパスに実装された文脈情報を用いて、統計的手法による近世語文法の「通説」の再検証を行い、その成果を国際学会等で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
CHJへの文脈情報の実装に関わる対面の打合せや、連携する研究者との対面による研究打合せが、折からのcovid-19感染症の流行により、すべて取りやめとなったため、打合せにかかる交通費等が執行できなかった。また、2020年度8月末に海外における国際学会で研究成果に関する発表を行う予定だったが、当該の学会がcovid-19感染症により延期・かつオンライン開催となったため、海外旅費も執行できなかった。さらに、CHJへの実装に関連する作業謝金の支払いも予定していたが、実装が間に合わなかったため、執行できなかった。 オンラインによる打合せを活用しつつ、新型コロナウィルス感染症の状況を見ながら年度の後半に、なるべく対面の研究打合せを行う。未使用金額の一部はその際の交通費として使用する。また、オンライン授業等のコンテンツ作成に大幅な時間を要し、十分な研究時間の確保が難しいため、バイアウト制等を利用して研究時間の確保をはかる。
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