本研究は①形態論情報・文脈情報を付与したコーパスの構築と②コーパスに基づく近世語文法の「通説」の再検証および新事実の発見という2つの目的をもつ。 ①の成果としては、会話データに話者情報(話者名・話者の性別・話者の社会的属性等)を付与し、精密化を図った「人情本コーパス」の8作品の構築が挙げられる。②の成果としては、当該のコーパス等を利用して指定表現の否定形態(ジャナイ、ジャアアリマセンなど)の実態調査を行い、指定表現の否定形態には、上方か江戸かによる地域差、『洒落本』か『人情本』かという資料差、話者属性による差があることを実証的に明らかにした。
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