研究課題/領域番号 |
18K00613
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
有元 光彦 山口大学, 国際総合科学部, 教授 (90232074)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 九州方言 / 動詞テ形 / 動詞タ形 / 形態音韻現象 / 崩壊 |
研究実績の概要 |
令和2(2020)年度は,九州方言の音韻現象(「テ形音韻現象」と呼んでいるもの)に関する詳細な言語データの収集及び記述を主たる研究目的として設定していた。 言語データの収集としては,宮崎県北部,大分県南部,長崎県本土北部など,まだ言語データの収集がなされていない地域に対する現地調査(フィールドワーク)を計画していた。しかし,熊本県大地震の余震や新型コロナウイルス感染症の影響により,現地調査に協力してくださる自治体やインフォーマントの手配はほぼ不可能な状態となった。当初夏の休暇時に計画していた現地調査であったが,次の年の2月・3月まで持ち越し,状況の改善を静観していたが,改善されることはなかった。従って,現地調査に関しては,可能な限り次年度に実施する予定である。 また,もう一つの目的であるテ形音韻現象の全体的な記述に関しては,大きな進展があった。特に,理論的な研究の成果として,テ形音韻現象の崩壊プロセスに関する研究,及びテ形とタ形との対応関係に関する研究をそれぞれ論文として発表した。前者においては,今まで収集した言語データを整理し,テ形音韻現象のタイプ同士を比較することによって,通時的な変化を見出した。後者においては,九州方言のテ形とタ形は音便現象において異なる振る舞いをするものであり,別の現象として捉えるべきであることを述べている。これらの研究成果は,今後の言語データの整理や分析においても非常に大きな貢献をしてくれるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,現時点までに収集した言語データの整理がかなり順調に進み,それを利用した理論的研究に大きな進展があった。 しかし,当初計画していた宮崎県北部,大分県南部等における現地調査は,熊本県大地震の余震や新型コロナウイルス感染症の影響により,全く叶わなかった。本調査では,非常に細かい音声の違いを聞き取るものであるため,対面でのインタビューが不可欠であるが,現時点では調査依頼先の地方自治体やインフォーマントの諸事情を優先せざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3(2021)年度は,本科研の最終年度に相当するが,現地調査に関しては,可能な限り調査時期を後ろにずらすことを考えている。また,オンラインでの調査についても検討したい。ただ,調査依頼先の機器等の環境が整っていない場合があるため,かなり難しいと予測される。 従って,本年度と同様に,言語データを整理し,テ形音韻現象の総合的な記述を優先することを考えている。また,テ形音韻現象という非常に複雑な現象をどのように地元の方々に説明・還元していくかといった,アウトリーチに関しても検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,熊本県大地震の余震及び新型コロナウイルス感染症の影響により,現地調査ができなかったことである。 今後の使用計画については,まず現地調査のための費用を確保しておきたい。現時点では実施できない可能性が高いが,計画には組み入れておきたい。また,言語データを整理し,データベースを構築,そして分析結果としての言語地図を鮮明に描くための機器の導入を予定している。さらに,最終的な総括として,研究成果報告書の印刷・製本・配付を計画している。
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