九州方言の音韻現象のデータ収集については,フィールドワークの計画は立案したものの,新型コロナ感染症の影響により実施することはできなかった。しかし,以前収集したデータに関する分析,及び方言形成・方言崩壊という斬新な観点からの理論的研究は大きく進展した。前者の言語データの記述については,宮崎県日南市,串間市,児湯郡西米良村・東臼杵郡椎葉村・西臼杵郡高千穂町の方言のテ形音韻現象をまとめた。また,後者の理論的研究では,テ形音韻現象に起こる方言崩壊プロセスを仮定した。テ形音韻現象を司る音韻ルールの適用環境に「特殊から一般へ」という性質が見出された。
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