本研究の目的は、日本語において名詞が持つ統語的特性と機能、そしてそれに影響を与える要因を明らかにすることである。名詞が動詞と並び文を構成する 重要な要素であることは一般的に知られていることである一方で、日本語の名詞自体の統語的分析は、形態的・統語的手がかりの少なさから、動詞と比べ非常に 遅れている。本研究では、同格名詞句の分析と、名詞から類別詞への文法化データという、これまであまり注目されてこなかったデータを使用し、多角的な視点 から観察することで、手がかりの少ない日本語の名詞の統語的特性と機能について解明を目指す。特に、1)名詞の持つ意味と統語的特性の関係、2)その性質に影 響を与える意味機能、に着目する。 2023年度は、Covid-19の影響により遅れていた成果の発表を行った。名詞述語について、春の全国学会でワークショップを企画し、名詞の持つ意味がどのように名詞述語文に影響するのか、また文の行う叙述がどのように名詞の解釈に影響するかを発表し、様々な意見交換を行うことができた。この内容に関しては、現在論文化しているところである。また、数量詞と名詞の関係についても、その共通点と相違点を同格構造をもとに検討することができた。今まで別々に議論されてきた同格名詞句と同格数量詞の共通点を指摘すると共に、後者の位置づけについて、名詞と比較することで見えてくる特徴を指摘することができた。この内容については、論文化し、学術誌に投稿中である。
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