研究課題/領域番号 |
18K00617
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
中里 理子 佐賀大学, 教育学部, 教授 (90313577)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 鶴屋南北 / オノマトペ / 江戸歌舞伎 / 上方歌舞伎 / ト書きとセリフ / 浄瑠璃 |
研究実績の概要 |
3年目の研究課題は、江戸歌舞伎の鶴屋南北の脚本に見られるオノマトペの特徴である。計画通り、鶴屋南北の4つの作品(「天竺徳兵衛万里入船」「彩入御伽草」「絵本合邦辻」「東海道四谷怪談」)からオノマトペを抽出し、その特徴を整理して、「鶴屋南北の歌舞伎作品に見られるオノマトペの特徴」『佐賀大学教育学部研究論文集』第5集第1号(令和3年1月、pp.81-93)として発表した。論文提出後、鶴屋南北に独自の特徴を明らかにするために、4作品に加えて「玉藻前御園公服」「桜姫東文章」の2作品からオノマトペを抽出して整理した。また、鶴屋南北が師事していた江戸歌舞伎の作者・櫻田治助からの影響を探るために、櫻田治助の「御摂勧進帳」「伊達競阿国戯場」「國色和曾我」の3作品からオノマトペを抽出し、特徴を整理しているところである。さらに、浄瑠璃作品と歌舞伎作品の語彙面の関連を考察するために、江戸歌舞伎が全盛になる直前の上方歌舞伎の作品からもオノマトペを抽出・整理した。上方歌舞伎の作品にはト書きとセリフ以外に浄瑠璃部分も多く見られ、浄瑠璃から歌舞伎への流れとそれに伴うオノマトペの使用状況が見て取れる。オノマトペを抽出した作品は、奈河亀輔の「伽羅先代萩」と「伊賀越乗掛合羽」、並木正三の「三千世界商往来」と「幼稚児敵討」、並木五瓶の「金門五山桐」と「天満宮菜種御供 」である。これらから抽出し整理したオノマトペをもとに、上方歌舞伎と江戸歌舞伎に見られるオノマトペの特徴についてまとめている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、鶴屋南北作品からオノマトペを抽出・整理し、ト書きとセリフに見られるオノマトペの特徴について考察し、「鶴屋南北の歌舞伎作品に見られるオノマトペの特徴」(『佐賀大学教育学部研究論文集』5-1)にまとめることができた。当初の計画に沿って、順調に研究が進んでいる。できれば、オノマトペを抽出する作品数を増やして、もう少し検討したいと考えている。現在、論部提出後にさらに3つの作品からオノマトペを抽出し整理したところである。また、ト書きの所作の指示について、上方歌舞伎や他の江戸歌舞伎との比較がしたいので、現在、上方歌舞伎の代表的な6作品(奈河亀輔、並木正三、並木五瓶から2作品ずつ)と、鶴屋南北が影響を受けた江戸歌舞伎作者・櫻田治助の3つの作品からオノマトペを抽出し、その特徴をまとめているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、現時点でオノマトペの抽出が終っている上方歌舞伎6作品(奈河亀輔、並木正三、並木五瓶の作品)と江戸歌舞伎3作品(櫻田治助の作品)のオノマトペを整理し、その特徴について考察し、論文にまとめる。上方歌舞伎については初年度・2年度に調査し考察した浄瑠璃作品のオノマトペとの関連を論じる予定である。次に、最終年度の課題とした「河竹黙阿弥」の歌舞伎作品からオノマトペを抽出し、整理した上で、黙阿弥作品のオノマトペの特徴をまとめる。その際、鶴屋南北作品に見られたオノマトペとの異同を考え合わせて、歌舞伎作品のト書きにおけるオノマトペのスタンダードと作者の個性、会話部分に見られる当時の一般的なオノマトペについてまとめる予定である。
|