前年度に調査していた上方歌舞伎の並木正三、奈河亀輔、並木五瓶の歌舞伎脚本に見られるオノマトペを対象に、上方歌舞伎のオノマトペの特徴を考察し、その成果を「近世上方歌舞伎に見られるオノマトペの特徴―江戸歌舞伎との比較を交えて―」(『表現研究』第114号)に発表した。さらに、江戸歌舞伎の作者である櫻田治助の作品を4つ取り上げ、作品に見られるオノマトペの特徴をまとめ、「櫻田治助の作品に見られるオノマトペの特徴―上方歌舞伎及び鶴屋南北との比較を交えて―」(『佐賀大学教育学部研究論文集』第6集第1号)に発表した。 また、前年度に江戸歌舞伎の鶴屋南北の歌舞伎作品を調査・研究したため、南北の次の時代に江戸で活躍した河竹黙阿弥の歌舞伎脚本のオノマトペについて調査し、その特徴をまとめた。河竹黙阿弥は江戸から明治にかけて長く活躍したが、江戸末期の作品を取り上げ、作品に見られるオノマトペの特徴を研究した。調査対象は「しらぬひ譚」「蔦紅葉宇津谷峠」「小袖曾我薊色縫」「三人吉三廓初買」「青砥稿花紅彩画」の5作品で、ト書き、浄瑠璃部分、セリフ部分にわけてオノマトペを抽出した。ト書きは心情表現、動きや表情、音楽や鳴物に分けて考察し、黙阿弥作品独特の特徴が見られた。抽出したオノマトペを、これまでに研究してきた上方及び江戸の歌舞伎作品に見られる特徴と比較しながら、黙阿弥作品独特の特徴、及び、他の作者にも共通する歌舞伎脚本のオノマトペの特徴を見出した。研究成果は「河竹黙阿弥作品のオノマトペ―幕末の歌舞伎脚本を対象に―」(『佐賀大学教育学部研究論文集』第6集第2号)に発表した。
|