研究課題/領域番号 |
18K00618
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
茂木 俊伸 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (20392540)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | とりたて / 取り立て / 副助詞 / 係助詞 / 複合辞 / 複合助詞 / 現代日本語文法 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本語文法研究の重要トピックである「とりたて」の研究をより深化させることを企図したものである。特に,助詞あるいは副詞(狭義「とりたて」表現)を中心としてきたとりたて研究の分析対象をより拡大し,従来の分析の“周辺”や“外側”の領域を開拓することを目指している。本年度(2018年度)は,本研究プロジェクトの初年次として,主に,研究全体の基盤作りを行った。 本研究においては,第一に,文法記述の対象を拡大することが重要となる。本年度は,まず,狭義「とりたて」表現を含む複合的表現(複合助詞,複合助動詞)ならびに広義「とりたて」表現の候補となりうる表現を対象とし,これらを網羅的に収集するために,文型辞典類および文法教材(計10冊)の項目調査を行った。この結果は,一覧表の形でまとめた。 またこれと並行して,広義「とりたて」表現の意味体系を検討するための準備的作業として,収集した表現のリストについて,意味・用法をタグ付与する形で整理した。さらに,先行研究が扱っている表現ならびに意味・用法と比較しながら,広義「とりたて」表現に含まれうる具体的な表現の範囲や,その定義に必要な概念規定の検討を行った。これらは口頭発表(2件)として公表した。 さらに,関連する文献収集を進め,ウェブ版「「とりたて」関連研究文献目録」を更新した(追加57件,リンク等修正184件)。これは2012年から公開している目録を本研究プロジェクトの目的に沿って更新したもので,本研究の副産物として今後の分析においても活用していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画として予定していた,文型辞典類や日本語教育用の文法教材,論文を中心とした文法項目調査は順調に進められた。国内文献の収集も予定以上に進んでいるが,海外文献の収集で入手困難な例があった。また,分析の候補となる項目はある程度集まったが,それらのバリエーション,類似表現を収集するためのコーパスを用いた探索的研究の実施がやや遅れている。以上を総合すると,研究全体としては,おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
文献を使った検討は一段落したため,コーパスを用いた探索的研究をより具体的に進めていく予定である。所属大学の部局の人員減少に伴う予定外の校務が生じ,慢性的な時間不足の状況が続いていることから,今後,より効率的に研究成果を挙げるためには,記述対象となる項目を適切に絞るなどの工夫を行う必要がある。 なお,海外分の文献に入手困難なものがあったため,文献収集の範囲(文献複写費の使用)を一部修正する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「その他」として主に国内・海外の関連文献の複写に利用する経費を計上していたが,海外文献に入手困難なものがあったため,未使用額が繰り越しとなった。「その他」の文献複写費残額については,書籍等として購入できるものは物品として購入し,また国内文献への使用をより強化することとする。
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