研究課題
本研究の出発点は、南米のボリビア多民族国に1955(昭和30)年に創設されたサンフアン日本人移住地及び同地移住者との出会いであった。小川俊輔(2013)「南米に移住した長崎のキリシタン家族 ―ボリビア多民族国サンフアン日本人移住地の事例―」『キリスト教史学』67で報告したとおり、長崎県からサンフアン日本人移住地に移住した人々の中に、潜伏キリシタンを先祖に持つ方々がおられ、ボリビアでも先祖伝来の信仰生活(熱心なカトリック信仰)を守っていた。その信仰生活の中で、キリシタン時代に宣教師から伝えられたラテン語やポルトガル語が維持・継承されてきた。本科研費による調査で訪ねたアルゼンチンとブラジル在住者はサンフアン移住地からの転住者であり、アルゼンチンとブラジルでも日本時代の信仰生活及び宗教生活語彙を保持していることが明らかとなった。また、国内外における複数のカトリック・コミュニティーでの調査から、明治時代から高度経済成長期まで、長崎のカトリック信者が国内外に移住することとなった社会経済史的背景(教会所在地域(=長崎県の離島沿岸部)の経済的困窮、太平洋ベルト地帯の都市化・工業化とそこへの人口流入、戦後のエネルギー政策の転換、炭鉱の閉山、等)及び宗教的確信に基づく南米移住(南米諸国はカトリック国であり、自由にカトリック信仰ができることを理由とする移住、等)について明らかにすることができた。そして、左の事由から国内外に多くの長崎系カトリック・コミュニティーが成立し、これを背景として、各地で先祖伝来の信仰生活・宗教生活語彙が維持されてきたことを明確にできた。以上が本研究の最大の成果である。但し、アルゼンチン、ブラジル、大阪、長崎とも、被調査者数が僅少であり、【本研究の目的】の目的に記した「各地で起きた言語変化の普遍性と特殊性を明らかにする」ことはできなかった。今後の課題である。
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県立広島大学地域創生学部紀要
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