日本語史研究の中で停滞していた、南北朝から室町時代初中期にかけての言語の諸現象についての記述的研究に着手した。口語を認定するためには、これに対立する文語規範の究明があり、双方向的な研究が望まれる。口語資料の有力な文献として『太平記』を取り上げ、特に米沢図書館蔵本の原本調査に従事し、その言語事象の観察を行った。一方の文語資料としては、平安時代の訓点語を軸として、各時代ごとの語彙データベースを作成した。また、室町時代の漢語を取り上げ、文語性、口語性を測定する試みを検討し、その成果の一端は中国、韓国での国際学会で発表した。この他、高山寺、東寺等の実地調査を行い、この時代書写の原資料を発掘した。
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