中世漢字片仮名交じり文において同仮名の連続は、多く補助符号たる重点(「ヽ」)を以て示される。本研究では次に示す文献群を取り上げて重点用法を検討した結果、次の結論を得た。(1)親鸞遺文においては自立語語頭では同字反復を、同語中尾では重点を用いる傾向が認められ、分節機能と一貫性の高さを評価できる。(2)大福光寺本『方丈記』では文位置に関わらず重点が多く用いられ、(1)とは全く異なる傾向を指摘できる。(3)①漢字―仮名比率、②重点状況、③仮名遣いの3点について検討した結果、観智院本『三宝絵詞』においては(1)(2)と比するに方針の徹底は認めがたいが、代わりに仮名大小の対立が分節機能を補助している。
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