コーパスを使って、日本語の否定表現の話し言葉における使用実態を明らかにした。基本的な否定が約67%で、次に多いのは「ではないか」類と「のではないか」類、その次は、モダリティ表現であった。聞き手の認識を喚起したり要請したりする「ではないか」も、話し手の見込みを表す「のではないか」も、間接的である一方で、「否定」「疑問」という聞き手に強い印象を与える表現である。話し手は間接性を活用しながらも、倒置にしたり終助詞をつけたりしてやわらげる傾向がある。「わけにはいかない」については、理由の表現が後続する例が約半数を占めることを指摘した。Jポップの歌詞を資料とし、否定に関わる逸脱表現の実態も明らかにした。
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