研究実績の概要 |
本研究は,近代日本の基本漢字文献に収録される漢字の字種・字体を調査し,個々の文献の特性(成立時期・背景,作成目的,作者,収録字数など)を考慮しつつ,それぞれの関係性を明らかにしようとするものである。本年度は,昨年度に引き続き資料の収集と整理を進めるとともに,西洋人の漢字文献の比較を行う段階に入った。具体的には次の資料についての検討を中心に研究を行った。(1)Chalmers, John, An account of the structure of Chinese characters under 300 primary forms, 1882,(2)Lay, Arthur Hyde, Chinese characters for the use of students of the Japanese language, 1895,(3)Chamberlain, Basil Hall, A Practical Introducti on to the Study of Japanese Writing, 1899. これら3文献の比較により,これまであまり研究がなされていなかった(1)の文献が,独自の特徴を多くもった研究価値のある漢字文献であることを確認し,本文の異同から(1)と(3),漢字集合同士の一致率の高さから(2)と(3)の,それぞれ文献間の影響力の強さについても明らかにした。この成果は,東アジア日本研究者協議会第4回国際学術大会(2019年11月,台湾大学)において「近代における西洋人による漢字文献の比較研究」という発表題目で発表済みである。 また,今年度は漢字文献の電子化作業を開始し,専門の業者に文献の撮影を依頼するとともに,電子化の際に必要となる機材を購入して自身でも可能な限りの整理を行った。この成果については,ある程度まとまってからオンラインで公表する予定である。
|