研究課題/領域番号 |
18K00631
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
岡墻 裕剛 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (30568340)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 漢字文献 / 基本漢字集合 / 漢字制限 / 漢字廃止論 / 明治の漢字 |
研究実績の概要 |
本研究は,近代日本の基本漢字文献に収録される漢字の字種・字体を調査し,個々の文献の特性(成立時期・背景,作成目的,作者,収録字数など)を考慮しつつ,それぞれの関係性を明らかにしようとするものである。 昨年度に研究対象とする個々の文献について基礎的な報告を行ったので,それを受けて今年度は文献同士の相似性や関係性についての調査を実施した。各種の文献同士の比較を行いつつそこに含まれる字種や字体の整理,作者の著作の記述内容に基づいた他の文献との関連性などを広く調査した。具体的な研究成果としては,安達常正『漢字の研究』(1909)と後藤朝太郎『教育上より見たる明治の漢字』(1912)という明治末期の2文献について,その特徴や書誌情報を示した報告を,岡墻裕剛「明治末期の漢字文献―安達常正(1909)『漢字の研究』と後藤朝太郎(1912)『教育上より見たる明治の漢字』について―」(2022)としてまとめた。 データの整理が終了していないため未だ公表できる段階にはないが,Lay, Arthur Hyde "Chinese Characters for the Use of Students of the Japanese Language"(1895),Chamberlain, Basil Hall 『文字のしるべ』(A Practical Introduction to the Study of Japanese Writing.)(1899),川田鐵彌・佐藤乾三編「漢字用例」(1901),仁科衞「減字私考」(1904),安達常正『漢字の研究』(1909),後藤朝太郎『教育上より見たる明治の漢字』(1912)などについては,画像の準備を進めている。 また,漢字研究者である池田証壽北海道大学名誉教授から本研究に資する多数の文献を譲り受け,その整理やデータ化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は,新型コロナウィルス感染症の影響で研究・調査・報告の全ての面で当初予定を変更しての実施を強いられているが,今年度も大学の授業ではオンラインと対面形式でのハイブリッド授業への対応が必要であった上に,コロナの影響もあって減少した志願者回復のための勤務校の大幅な大学改革なども強いられ,研究時間を確保することが極めて困難であった。そのため,本来今年度がこの研究の完成年度であったが,そこに至ることができずに研究機関の延長を申し入れた。
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今後の研究の推進方策 |
過年度で実施できなかった文献についての調査ならびに分析を,コロナ禍の状況においても可能な形で実施する。また,入手した文献の比較を比較するとともに,今年度中に各文献の漢字画像をオンラインで提供する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」で述べたとおり,本年度は新型コロナウィルス感染症への対応により十分な研究時間がとれなかったことが原因である。また,他地域への資料調査の取り止め(そもそも受け入れてくれない)と学会活動のオンライン化により,使用予定だった旅費についても消費しなかった。
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