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2018 年度 実施状況報告書

ミニマリスト・プログラムにおける関係節と比較節の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K00635
研究機関北見工業大学

研究代表者

戸澤 隆広  北見工業大学, 工学部, 准教授 (70568443)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード関係節 / 比較節 / ラベル付け理論 / 演算子移動分析 / 主要部繰り上げ分析
研究実績の概要

本研究では、句範疇が移動先でラベルになる仕組みを解明する。具体的には関係節と比較節の派生では、句範疇が移動し、移動先でラベルになるとし、句範疇が移動先でラベルになる仕組みを明らかにする。これにより、構成素のラベル付けのアルゴリズムの解明を試みる。
2018年度はthat関係節とwh関係節の内部構造の解明を目標とした。この目標を達成するために、(i)先行研究の理解、(ii)that関係節とwh関係節の派生方法の検討、(iii)ラベル付け理論の把握、以上の三点の研究に従事した。
(i)について、Aoun and Li (2003), Hulsey and Sauerland (2006)を精読することで、wh関係節とthat関係節の統語的共通点と相違点を整理した。また、関係節のデータ収集を行った。これらの基礎研究により、that関係節とwh関係節の内部構造の解明の土台を築いた。
(ii)について、that関係節には演算子移動分析と主要部繰り上げ分析の二種類が有効だが、wh関係節には演算子移動分析のみが有効である可能性を追求した。
(iii)について、Chomsky (2008, 2013, 2015), Donati (2006), Cecchetto and Donati (2015)を熟読し、ラベル付け理論の理解に努めた。現行のラベル付け論では句範疇は移動先でラベルになれないが、これが経験的に妥当であるのか検証した。
ここまでの研究成果を北海道英語英文学第63号に論文発表した(タイトルはOn the Derivation of English Relative Clauses)。本論文では、that関係節の主要部繰り上げ分析では、句範疇の移動と主要部移動が関与すると主張した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2018年度は次年度の理論的研究に向けての基礎研究を行った。具体的には、(i)先行研究の理解、(ii)that関係節とwh関係節の派生方法の検討、(iii)ラベル付け理論の把握、以上の三点を目標とし、次年度の研究の基礎を築いた。
(i)について、関係節の先行研究の精読を行い、その利点と問題点を整理した。その中で、that関係節とwh関係節には統語的相違点があることを発見した。
(ii)について、that関係節とwh関係節に様々な統語テストを行った結果、両関係節の派生方法には違いがあることを見出した。
(iii)について、主要文献の熟読からラベル付け理論の論点を整理した。また、当該理論の妥当性を検証した。その結果、アラビア語のthat関係節が素性共有のラベル付けを支持することが明らかになった。一方、英語のthat関係節の調査により、句範疇が移動先でラベルになれることが分かった。現行のラベル付け理論では句範疇は移動先でラベルになれない。そうすると、英語のthat関係節はラベル付け理論にとって問題となりうる。この問題は次年度の研究課題とした。
これらの研究成果を論文発表(北海道英語英文学第63号)と口頭発表(第11回北海道理論言語学研究会)した。
以上、課題が見つかったが、(i)-(iii)の目標はある程度達成できたと考えられることから、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。

今後の研究の推進方策

2019年度では、理論的研究と不定詞関係節の統語論研究を中心を行う。具体的な研究目標は(i)不定詞関係節の統語特性の調査 (ii)不定詞関係節の派生方法の検討、(iii)ラベル付け理論の精緻化、以上の三点である。
(i)について、主要な先行研究を精読することにより、不定詞関係節の統語特性を把握し、それに対してどのような説明がなされてきたかを理解する。また、データの収集・観察を行うことで、不定詞関係節の統語特性の理解を深める。
(ii)について、不定詞関係節の統語特性が最新の言語理論から帰結するかを検討する。また、that関係節とwh関係節で行った統語テストを不定詞関係節でも行う。これに基づいて、不定詞関係節の派生方法を検討する。
(iii)について、句範疇が移動先でラベルになるメカニズムについて検討する。フェーズ不可侵条件が構成素のラベル付けに関わるという可能性の代案として、句範疇が移動した後にその主要部がさらに移動する可能性を検討する。この可能性については、2018年度である程度検討したが、2019年度でこれをさらに追及する。
(i)-(iii)の研究成果を学会発表・論文発表し、研究者から示唆をいただくことで、ラベル付け理論の精緻化を目指す。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] On the Derivation of English Relative Clause2019

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Tozawa
    • 雑誌名

      Studies in English Literature: Regional Branches Combined Issue

      巻: 11 ページ: 17-27

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Whose NPは関係節の先行詞になれるか?―関係節の内部構造の解明2018

    • 著者名/発表者名
      戸澤隆広
    • 雑誌名

      第90回大会Proceedings: The 90th General Meeting of The English Literary Society of Japan, 19-20 May 2018 (付 2017年度支部大会Proceedings)

      巻: なし ページ: 125-126

  • [学会発表] 不定詞関係節の派生―ラベル付け理論の観点から2019

    • 著者名/発表者名
      戸澤隆広
    • 学会等名
      北海道理論言語学研究会

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公開日: 2019-12-27  

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