研究実績の概要 |
本研究では、句範疇が移動先でラベルになる仕組みを解明する。具体的には関係節と比較節の派生では、句範疇が移動し、移動先でラベルになるとし、句範疇が移動先でラベルになる仕組みを明らかにする。これにより、構成素のラベル付けのアルゴリズムの解明を試みる。 2018年度はthat関係節とwh関係節の内部構造の解明を目標とした。この目標を達成するために、(i)先行研究の理解、(ii)that関係節とwh関係節の派生方法の検討、(iii)ラベル付け理論の把握、以上の三点の研究に従事した。 (i)について、Aoun and Li (2003), Hulsey and Sauerland (2006)を精読することで、wh関係節とthat関係節の統語的共通点と相違点を整理した。また、関係節のデータ収集を行った。これらの基礎研究により、that関係節とwh関係節の内部構造の解明の土台を築いた。 (ii)について、that関係節には演算子移動分析と主要部繰り上げ分析の二種類が有効だが、wh関係節には演算子移動分析のみが有効である可能性を追求した。 (iii)について、Chomsky (2008, 2013, 2015), Donati (2006), Cecchetto and Donati (2015)を熟読し、ラベル付け理論の理解に努めた。現行のラベル付け論では句範疇は移動先でラベルになれないが、これが経験的に妥当であるのか検証した。 ここまでの研究成果を北海道英語英文学第63号に論文発表した(タイトルはOn the Derivation of English Relative Clauses)。本論文では、that関係節の主要部繰り上げ分析では、句範疇の移動と主要部移動が関与すると主張した。
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