研究実績の概要 |
本研究は、極小主義プログラムの最新の動向を踏まえて、概念・意図システムへの入力としての論理形式(Logical Form=LF)表示の妥当な形式とその解釈を解明することを目的とする。具体的には、適切な解釈に対応するラベル付けの解明、付加構造の解釈の解明、および遂行節の詳細な構造の解明の3つの観点から新たなLF表示の理論を提示することを目的とする。まずラベル付けの観点では、基本文献であるChomsky(2013)POP、およびChomsky(2015)POP: Extensionsを基盤として、Oku(2018)“Labeling and Overt/Covert Movement,” Goto(2017)“How to Label There-Constructions,” 等を批判的に検討した。2つ目の付加構造の問題に関しては、Hunter(2015)”Deconstructing Merge and Move to Make Room for Adjunction,” Fischer (2018) “Locality, Control and Non-adjoined Islands,” 等を検討した。3つ目の遂行節については、Ramchand(2018)Situations and Syntactic Structures, 等を検討した。このような研究の成果の発表として、第58回名古屋大学英文学会(2019年4月20日、名古屋大学)において特別講演(招待講演)を行い、第37回日本英語学会(2019年11月10日、関西学院大学)において、シンポジウムの司会および講師を務めた。また論文として、金子(2020)「英語における二重接触現象のCP移動分析の帰結についての覚え書き」として発表した。これらに加えて、文献および研究情報の収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、初年度の基盤的研究年度、2年目の拡充的研究年度、3年目の展開的研究年度、4年目の総括的研究年度からなる4年間の研究である。次年度は3年目の展開的研究年度であり、3つの具体的目標である、適切な解釈に対応するラベル付けの解明、付加構造の解釈の解明、および遂行節の詳細な構造の解明について展開的研究を行う。1つ目のラベル付けと2つ目の付加構造の問題の両方にまたがる研究として、Bode(2020)Casting a Minimalist Eye on Adjunctsを中心として、Bowers(2018)Deriving Syntactic Relations、Jakielaszek(2017)A Minimalist View on the Syntax-Semantics Relationship、Sportiche(2017) “Fewer Adjuncts, More Relatives,” Zeijlstra(2019)“Labeling, Selection, and Feature Checking” 等の批判的考察を行う。遂行節に関しては、Woods(2016)Investigating the Syntax of Speech Acts: Embedding Illocutionary Forceを中心として、Endo and Haegeman(2019)“Adverbial Clauses and Adverbial Concord,” 等の批判的検討を行う。さらに、非顕在的移動におけるコピーの音声化の問題との関わりで、Dobashi(2019)Externalization: Phonological Interpretations of Syntactic Objectsの検討を行う。以上に加えて、文献収集および研究情報の拡充整備を行う。
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