研究課題/領域番号 |
18K00637
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
廣瀬 幸生 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00181214)
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研究分担者 |
和田 尚明 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40282264)
金谷 優 筑波大学, 人文社会系, 助教 (50547908)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | デフォルト志向性 / 三層モデル / 構文 / 機能 / 対照言語学 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画では最終年度の予定で、(1)これまでに得られた研究成果を最大限に活用し、三層モデルにもとづく日英語の構文研究をさらに発展・拡充し、できるだけ学会発表や論文の形で刊行していくことを目指すとともに、(2)全体の総括も兼ね、特に、日英語の構文には各言語のデフォルト志向性を継承することで存在意義が与えられるものと、それを解除することで存在意義が与えられるものがあり、どちらも三層のあり方との関係で特徴づけられるとする基本的仮説の妥当性を改めて検証する方向で研究に取り組んだ。 (1)については、予定されていた学会発表がコロナ禍の影響で中止や延期になったりした関係で、論文の形での発表やオンライン研究会での発表が主になった。廣瀬は、英語の非定形節に見られる主体化現象についてこれがデフォルト志向性の解除によって説明されることを示す論文と、日英語の再帰形に見られる視点現象についてこれが三層モデルの延長線で分析できることを示す論文を発表した。和田は、日英語の三人称小説における時制形式選択とその関連現象について三層モデルを発展させる論文とともに、自らが開発してきた時制理論・モダリティ理論と一体化する包括的時制解釈モデルに関する論文を発表した。金谷は、イデオフォンの日英類型論と構文分析について三層モデルとの関連性を視野に入れ、研究発表を行った。 (2)については、上述のような論文等を発表するとともに、三層モデルの基本的仮説を継承しつつその発展的可能性を扱う論文集出版の予定を立てた。さらに、三層モデルに詳しい研究者を学外から招いて講演会・公開ワークショップ等を開催し、より広い視野からの検討を行う予定であったが、この部分はコロナ禍の影響で実施できなかったので、補助事業期間をもう1年延長することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、文法と語用論の関係に関して言語が通常示す一般的傾向・特徴を「デフォルト志向性」と呼んだうえで、日英語におけるデフォルト志向性と様々な構文の機能の関係について体系的な対照研究を行うのが目的であり、次の3点を実証すべく研究を進めている。①日英語のデフォルト志向性は、代表者の廣瀬が提唱する「言語使用の三層モデル」によって捉えられ、日本語は、思考・意識の主体としての私的自己中心言語、英語は伝達・報告の主体としての公的自己中心言語と特徴づけられる。②日英語の構文には、各言語のデフォルト志向性を継承するものと、それを解除するものがある。③デフォルト志向性を解除する構文は、三層モデルが規定する日英語の無標の関係を変更させる特徴をもつ。 これまでの研究で上記①については、さまざまな角度からその経験的妥当性が実証されてきている。さらに、②の部分で特にデフォルト志向性を継承する現象については、廣瀬・和田・金谷ともに、それぞれの分担領域全般でしかるべき研究成果をあげている。また、②と③のデフォルト志向性を解除する現象については、特に、金谷が理由を表すBecause X構文で、廣瀬が英語の非定形節構文でその存在を明らかにしており、それによって、これらの構文の機能がより的確に捉えられることを示している。しかしながら、この点については、もう少し広く考察する必要がある。そのために、三層モデルに詳しい研究者を学外から招いて講演会・公開ワークショップ等を開催し、より広い視野からの検討を行う予定だったが、本年度はコロナ禍の影響でそれが実施できなかった次第である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を最大限に活用し、三層モデルにもとづく日英語の構文研究をさらに発展・拡充し、できるだけ学会発表や論文の形で刊行していくことを目指す。 さらに、研究成果をより広く発信するために、三層モデルの基本的仮説とその発展的可能性を扱う論文集出版に向けて、研究をまとめていく。 また、令和3年度は1年期間延長した本プロジェクトの最終年度でもあるので、これまでの研究を踏まえ、全体の総括も行いたい。特に、日英語の構文には各言語のデフォルト志向性を継承することで存在意義が与えられるものと、それを解除することで存在意義が与えられるものがあり、どちらも三層のあり方との関係で特徴づけられるとする基本的仮説の妥当性を改めて検証したい。そのために、三層モデルに詳しい研究者による講演会等をオンラインで開催し、より広い視野からの検討と意見交換を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由> 本年度に予定していた学外研究者との研究会・講演会や学会発表などがコロナ禍の影響で実施できなかったため。 <使用計画> 主な使用目的は、学外から招く研究者への謝金と学会発表のための旅費等としての使用である。ただし、オンライン開催となった場合は、それに対応するのに必要な費用として主に用いる予定である。
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