本研究は、英語の歴史における時空間体系を分析するにあたり、これまでの分析に新たな次元、すなわち談話を加えることにより、時間・空間・歴史・談話による四次元分析を行うことを目的とする。 本年度は、昨年度までの研究結果を踏まえ、チョーサー、パストン家書簡集、ラングランド(中英語)の時空間に関する分析を行い、時空間体系の四次元分析を精密化することにつとめた。また、これら中英語のコーパスと、初期近代英語をコーパスとした分析の結果について、5件の国際学会(いずれもオンライン)において発表を行った。 ラングランドの『農夫ピアスの夢』をコーパスとした分析においては、時空間の要素に関するこれまでの分析の誤りを修正したうえで、特に次の談話に関する要素に注目して分析を行った。(1)談話を構造化する要素、(2)近称あるいは遠称のパースペクティブを取りやすくさせる要素、(3)パースペクティブを交替させる要素、(4)時間体系、空間体系、そして時空間体系の中でパースペクティブを交替させるファクターである。パースペクティブの交替は、さほどダイナミックではないが、関連する要素やファクターを特定することができた。 これまでの三次元による分析に新たに談話の次元を加えることにより、空間、時間、歴史、談話の4つの次元による分析が可能となった。多くの要素やファクターが関連しているため、コーパスを絞ることにより得られた知見を展開しつつ、レジスター間の相違点の分析や、さらに詳細な広い視点からの談話の分析を行うことにより、歴史における時空間体系がどのようなものであったのか、さらなる解明に取り組んでいきたい。
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