研究実績の概要 |
昨年度より本格的に開始した初期近代英語期の個人言語を扱うコーパス、SAEMEP (= Selected Authors' Writings in the Early Modern English Period) の構築をさらに進めると同時に、使用可能となったコーパスを利用して、個別領域の言語研究、特に英語の副詞の変化についての研究を行った。 より具体的には、2020年3月に公刊した "Selected Authors' Writings in the Early Modern English Period and the Historical Development of Always" において、まずその前半で、Sir Thomas More, Francis Bacon, William Cowper, John Milton, Richard Baxter, Robert Boyle, John Lockeといった個人の言語を集積したSAEMEPの構築の現状をコーパスの構造とともに公開した。 同時に後半では、副詞のalwaysが、中英語期により一般的であったalway(すなわち語尾の-sが付かない形)から副詞的属格語尾の-sを獲得する過程を経て徐々に現在のようなalwaysに発達していく様子をSAEMEPにおいて検証し、その結果を示した。初期近代英語の最初期、特にSir Thomas Moreの英語においては、all way, alway, allwey, alwayesなどのさまざまな形態が観察できる。ところがalwaysは、時代の変化とともにそのバリエーションの数を少しずつ減らしてalwaysに収束していく。本研究では、この変化の様子を明らかにすることができたと同時に、その変化のあり方が個人によって大きく異なっており、言語史研究において個人言語の分析が不可欠であることにも明らかになった。
|