研究課題/領域番号 |
18K00645
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歴史社会言語学 / 英語史 / コーパス / 中英語写本 / 初期近代英語 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究実績の1つは、、2018年度にフィンランドのタンペレで開催されたICAMEで口頭発表を行った-ingly副詞の拡張について、さらに初期近代英語期の文献資料の調査を加えて掘り下げを行い、その結果を "So-called -ingly adverbs in Late Middle and Early Modern English" という論文として公刊したことである。lovingly, seeminglyなどの-inglyを伴う副詞の発達を考える上で、中英語後期から初期近代英語期はきわめて重要な時期にあたる。中英語期にはまだ萌芽的な用法が中心であるのに対して、初期近代英語期になると、現代英語の-ingly副詞に近い用法が広がりを見せてくる。2018年度の段階では、数名の著者に見られる個人的な傾向の焦点をあてた発表を行ったが、その後の研究でさらに調査範囲を広げて、-ingly副詞の拡張のプロセスを明らかにした。 次に、中英語の写本を転写する際に、写字生個人の言語と原本の英語がどのように影響し合うかについて、スペリングに焦点を当てながら、15世紀イギリス写本で調査した。写字生の言語と原本の間に言語的な隔たりがある場合に、両者の言語が写本内に混在する状況が見られ、そのパターンを分析することで、当時の言語の実態を推定することができそうである。現段階ではこの調査はまだパイロット的であるが、オンラインで開催されたHiSoN2021(2021年3月17日~19日)において、"Intra-text Variation as a Case of Intra-writer Variation: Middle English Scribal Behaviours"というタイトルで、現段階での成果を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中英語後期から初期近代英語における全般的な変化と個人言語の関係について、副詞やスペリングなど、いくつかの側面から調査を行うことで、使用しているコーパスの有効性もある程度確認できてきたと言える。現段階では取り上げた言語現象に限りがあり、また成果の中にはパイロット的なものも含まれているが、全体としてはおおむね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、本研究課題のまとめの段階に入るので、パイロット的な研究にとどまっているものについては、より深い掘り下げを行いたい。本プロジェクトで作成したコーパスを用いて、さらに扱う言語現象の範囲を広げていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の遂行に必要な情報を収集することを目的とした海外渡航を、COVID-19の感染拡大を受けてキャンセルせざるを得なかった。このため、残額が生じている。2021年度についても同様の状況が予測できるので、渡航が困難な場合には、画像の取り寄せや文献の購入によってできる範囲の資料収集を行うこととし、生じた使用額をこれに充当する予定である。
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