研究課題/領域番号 |
18K00646
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 禎之 大阪大学, 文学研究科, 教授 (90233329)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 因果関係の副詞句 / コーパス研究 / 語彙概念拡張 / 使用レジスター / because X |
研究実績の概要 |
because XのX項に入る要素が名詞である場合が歴史的に最初に登場したと筆者は考えているが、Bergs (2018)は、COHA(Corpus of Historical American English)のデータを部分的に調査して、形容詞がX項に登場する例が最初にあったのではないか、と考えている。 筆者は、Oxford English Dictionary, COHA, GloWbE (Global Corpus of Web-based English)をより広範に、より網羅的に調査することで、名詞句が補部である事例からスタートして、裸名詞や形容詞が補部にくるタイプへと拡張していったことを明らかにした。このような調査は、これまでに行われたことがなく、 様々な憶測が認められてきたこの特殊な構造の発生パターンに、一定の回答を与えることが可能になったと考えている。(becauseは因果関係表現の中でも最も使用頻度の高い接続表現であるため、使用事例のすべてを調査することは個人の処理能力を超えるものである。従って、すべてのコーパス事例の調査を行えたわけではないが、これまでの調査よりは広く、多種のコーパス調査を行えたと考えている。) 他の因果関係表現の中で、同様の変化が認められるのがin case Xという形式に限られている(少なくとも現在のところ)という事実とも整合する観察であり、この点でも筆者が考えている発生プロセスに対してさらにサポートを与える調査ができたと考えている。 この調査内容については、今年の文学研究科紀要と次年度の文学研究科紀要において公表することになるし、また海外雑誌にも投稿していて、現在審査中である。また開拓社が企画しているシリーズ本にも一部の内容を反映させて執筆する予定であり、いくつかの方法で研究内容の公表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、because Xの歴史的発達についてのコーパスデータの調査を行う予定ではなかった。日本語における同様の事象を観察できるかどうかを考察する予定であった。しかし、方向性は変わったものの、過去に行われたことのない調査を行うことができ、because節には認められないと思われた等位構造的な用法や、主語と繋辞動詞を省略する構造が現実には無視できない数に渡って観察できることを始めとして、because Xの歴史的発達について、コーパス調査を行うことで、知られていなかった知見を得ることができたと考えている。この点において、むしろこのような寄り道を行えたことは、研究の進展としては歓迎すべきものであったと考えている。 当初の想定とは異なる方向への発展ではあったものの、研究の発展段階としては、概ね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
日本語や他の言語における、因果関係の副詞句における概念拡張についての観察を行うことと同時に、今年の研究、調査で明らかになったbecause節に認められる特殊な構造(等位構造的用法や、主語と繋辞動詞を省略する用法)が何故可能になっているのかを考察することも、因果関係の表現において、どのような概念拡張が認められるのか、または認められないのか、という問題と関連している。従って、このような問題意識を追求していく方向性も同時に考えていきたい。 because Xに関する調査は、筆者のみならず国内外でも多数の研究者が行っているが、because節に認められる特殊構造については、一般に認められない構造であると想定されているものであるので、全く新しい調査内容として、遂行していく価値は充分にあるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は5000円強であるので、参考図書を購入するなどで使用することが可能であり、当初の計画を変更する必要性に迫られることはないと考える。
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