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2021 年度 実施状況報告書

テキストの結束関係と語彙概念拡張

研究課題

研究課題/領域番号 18K00646
研究機関大阪大学

研究代表者

岡田 禎之  大阪大学, 文学研究科, 教授 (90233329)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード因果関係 / 従属接続詞 / コーパス / 使用レジスター / 等位接続
研究実績の概要

because X構文の歴史的発展についての論考"Category-free Complement Selection in Causal Adjunct Phrases."が紙媒体として最終的にCambridge University Pressから出版された。昨年はfirst-view articleとしてオンライン上で公開されたのみであったが、本年度に正式に出版された。また、この研究に続く内容としてbecauseがif/thoughなどの因果関係接続詞と同様に、語レベルの等位接続構造を形成することについての論考を紀要論文として発表した。従属接続詞のthough(およびif)が、He is a [stern though kind] teacher.のような形容詞を等位接続する構造に表れることはよく知られているが、同様の構造はbecauseにも認められる。しかし、筆者が調べた限りの辞書類にはこの用法は記載されておらず、一般に広く認知されている用法であるとは考えにくい。興味深いことに、while/sinceにも同様の構造が認められるが、いずれも因果関係解釈の用例にのみこの構造は認められ、時間関係の解釈では認められないことが判明した。このことから、因果関係解釈の接続詞類と時間関係の接続詞類を対比させ、何故前者にこのような構造が認められ、後者には認められないのか、について考察を加えた。(i)因果関係が命題間に認められる結束関係であること、(ii)前置修飾の形容詞は本質的特性を表しやすいが、因果関係との相性は悪くないこと、(iii)順接・逆接の等位接続詞によって表すことができる因果関係の4つのバリエーションを表すために従属接続詞を当該の構造に利用することが潜在的に可能であること、などが理由となり、前者においてこの構造が認可されるのではないかと結論づけた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画は他言語におけるbecause X構文の調査を継続することであったが、この構造を調べるうちに発見することになった[A because A] N型の等位構造についての調査に現在はシフトしている。その意味では計画通りには進んでいないということになるが、これまで調査されてきていないと思われる現象に取り組むことになったという点では、充分に進展していると考えられる。今後、当初の研究計画に戻っていくことも考えられるが、今しばらくは従属接続詞に例外的に認められる等位構造がどのような特徴をもち、また他言語においてどのように振る舞うものであるのかを確認する作業を続けたいと考えている。当初予期していなかった方向への転換ということになるが、上記の理由から概ね順調に進んでいるものと考えたい。

今後の研究の推進方策

従属接続詞に認められる語レベルの等位接続構造は、例外的な現象であると考えられるが、因果関係を表す接続詞には認められるようである。この現象に関して、現在のところ英語についての調査を行っているが、ある雑誌のレフリーから、他言語における状況も調査する必要があるとの示唆を受けた。このことから、今後他の言語における状況を調査し、英語においてこの構造が発展した理由として筆者が取り上げた3つの観点が、他の言語においても同様に当てはまるものであるのか、それとも言語によって状況は大きく異なるものなのか、を確認していきたいと考えている。手始めに、日本語に関する調査を行い、フランス語やドイツ語など、ヨーロッパ言語の調査を行う予定である。次年度は日本語のコーパス資料の洗い出しから始め、また日本語の接続表現の分類やその特徴を確認していく作業から進めていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍ですべての出張が取りやめとなり、オンラインでの学会参加のみになったことから、旅費の執行がすべてなくなったため、予算の計画通りの執行には至らなかった。ただし、大部分の予算は図書資料の購入に振り替えたので、ごく少額の残余が残っただけである。今年の予算執行計画に関しても、旅費の使用は恐らく難しいと思われるので、図書資料類の購入に大部分は振り替えることになるかもしれない。今後のコロナ感染状況の推移によっては、予算執行計画に変更が必要になる事態も充分考えられる。そのあたりは柔軟に対応していきたい。コンピューターのプラットフォームがウィンドウズ11に変更されたことに伴い、周辺機器との不具合が認められるようになっているため、一部の機器などを買い換える必要もありそうで、物品購入に必要な金額が当初の想定よりも増えるかもしれない。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] 因果関係を表す接続詞に見られる等位構造2022

    • 著者名/発表者名
      岡田禎之
    • 雑誌名

      大阪大学大学院文学研究科紀要

      巻: 62 ページ: 73-95

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Category-free Complement Selection in Causal Adjunct Phrases2021

    • 著者名/発表者名
      Sadayuki Okada
    • 雑誌名

      English Language and Linguistics

      巻: 25/4 ページ: 719-741

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2022-12-28  

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